あてつけ

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俺はそっと寝室のドアを開けた。 すると、真斗が俺の方に身体を向けた。 「やっと来た。」 真斗は眠そうな声で言った。 「寝ててもよかったのに。」 「俺が居ないと眠れないって晶が言うから。」 ほら、そういう所。 本人は自覚がないのだろうが、俺は期待してしまう。 そして、勝手に落ち込む。 その繰り返し。 「だって、真斗と寝ると落ち着くんだもん。」 「くっつくと暑苦しい。」 「でも、今日はこうしてて?」 「ったく、仕方ないな。」 そう言いながら、真斗は俺を抱き締めた。 真斗の鼓動が心地いい。 もっと触れて欲しい。 「真斗。」 「ん?」 俺は真斗を見つめた。 だが、次の言葉が出てこない。 「……おやすみ。」 「おやすみ。瞼が閉じそうだ。」 「俺より先に真斗が寝そうだね。」 「晶も早く寝ろよ。」 「はーい。おやすみのキスは?」 「寝言は寝て言え。」 「んふふっ、冗談だよ。」 俺は笑って今夜もうそをつく。
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