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気絶しそうなほど長いメールの文面をたどることは諦め、添付されている画像へとジャンプする。
「ヴィーナス……ビロウ?」
フルネームだろうか。送信元は確かに配信主である麗人で、【name : ヴィーナス・美朗】と書かれていた。
「ちょっと面白かったけど、女神認定って。さすがに、そこまでガチのリスナーにはなれないかな。キャンセル、キャンセル……」
勢いで押したであろうヴィーナスのサポートページを解除しようと、碧は配信アプリを開く。
「ヴィーナス、ヴィーナス……あれ?」
【占い雑談】カテゴリでヴィーナスを探すも、該当する主の名は見つからない。
「嘘。このまま『有料会員へ移行します』ってことにならないよね?」
ページごと削除されたなら構わない。消えたと見せかけて『無料でご利用いただけます。ただし、登録から七日目以降は有料です』という類の悪質なサイトでないのならば。
再び『女神認定』メールへ戻り、スクロールを終えることトータル五分。ようやく見えたゴールの一文は、思いもよらぬ文言だった。
【ヴィーナスの到着まで、残り30秒】
「へ?」
デジタル表記の数字が現れ、時限爆弾が仕掛けられているかのごとくカウントダウンされていく。
「ほ……ば……バスガス、スマホ爆発!?」
パニックの余り、碧が取った行動は。二階であることも構わず、目を閉じたままお手玉状態のスマホを窓際から投げ落とすという暴挙だった。
「どかあーーーん!!」
「ぎゃあああーーーん、どかん?」
窓の下で響いたのは、爆発音ではなく……人の声。恐る恐る覗いた先に見えたのは、落としたはずの碧のスマホを右手に掲げた自由の女神……のような━━。
「ヴィーナス!?」
「はぁい。時間厳守、ヴィーナス浮上!」
等身大の麗人【ヴィーナス・美朗】の姿であった。
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