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「いや〜、抜けちゃったんだよ。これが」
「抜けたってソレ、聖剣だろ」
親友が久しぶりに故郷に帰ってきたら、聖都で剣を抜いて勇者にジョブチェンしてた。酒場で見せてくれた聖剣は金の装飾付きのパねぇ剣だった。
どうやら道中仲間を集めながら冒険していたらしい。
「仲間にめっちゃボインのサモナーが居るんだぜ」
「おまっ、なんで今日連れてこなかったんだよ!」
「はははっ、お前、セクハラしそうだし〜」
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夜通し飲み明かした後、俺だけ潰れてしまったらしい。朝、目覚めると勇者の姿はなかった。
(アイツ、もう行ったのかーー)
会計をすると、無愛想なマスターがあるモノを差し出してきた。
「お客さん、忘れものだよ」
「忘れものって俺の荷物は全部......げ」
聖剣だ。勇者の奴、やりやがった。
「仕方ねぇなぁ」
(アイツの仲間のボインのサモナーを見るためにも届けてやってもいいか)
隣町に行くと言ってたので、今なら間に合うだろう。
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「は? もう出立した?」
「はい。勇者様御一行でしたらつい半刻前に次の街へ経たれましたよ」
「なんだよ。折角人が届けに来てやったのに」
俺は途端に面倒になって帰ることにした。大体、忘れ物は忘れた奴が取りに来るべきだ。
ふと、念のため一つ聞いておいた。
「......そういえば、勇者パーティーのサモナーの谷間はどのくらいだったか?」
「サモナーの方? あぁ! 凄い身体されてましたね!」
(凄い身体か......)
「巨乳すぎていつも肩が凝るって言ってました」
(その肩、俺が揉もう)
俺はやろうと思ったことは最後までやり遂げるべきだと思い直し、聖剣を持って勇者一行を追いかけた。
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それから、俺が訪ねた街やダンジョンでは勇者は常に半刻前に出立していた。足の踏み場もない毒沼、凶暴なドラゴンの巣窟、-20度の氷山etc…
兎に角、勇者一行は手の届きそうなところで居なくなり、サモナーの情報が細切れに入ってくるだけだった。
(布面積が狭い、目尻に黒子、声が高くて名前はナチューー最高か!?)
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そしてついに魔王城で勇者一行が魔物に捕まったところで俺は追いついた。
巨大触手に掴まれた勇者達を俺が聖剣で解放したのだ。
「来てくれると思ってたんだ」
「親友さん、ありがとう!」
感動のサモナーとの対面がヌルヌル消化液塗れとはけしからん。
俺はゆっくりと振り返る。
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「ってサモナー、男じゃんよ!!」
とんでもない巨乳のマッチョが俺を喜びでプレスした。
ーーおわり
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