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 目を凝らせば、岩のようにゴツゴツとした大きな体が見える。大蛇のような太い尻尾に、左右両側に生えた大きな翼……目の前にいるのは、御伽話なんかでよく聞くドラゴンそのものだった。ドラゴンは、頭をあっち側にしてスフィンクスのように伏せをしている。 「タクミさん。あのドラゴン、見覚えありませんか?」  そのとき、小人からとんでもない質問が飛び出す。僕は慌てて首を振った。 「見覚えも何も……僕はドラゴンなんて初めて見たよ」  すると、間髪入れずに小人が声を上げる。 「あなたの奥様ですよ!」  この小人は何を言ってるんだろうか。  僕はまた急いで首を振る。 「待ってくれ。たしかに僕には『アキ』という名前の妻がいるが、正真正銘人間だし……」 「やっぱり! タクミさん、あなたは何も覚えていないのですね?」  小人は興奮気味に話す。対する僕は自分の妻がドラゴンだったことがあるか考えてみたが、やはり人間以外の妻を見た覚えはない。難しい顔をしながら考えていると、小人は「私から説明しましょう」と胸を張った。 「いいですか、タクミさん。まず、あなたは魔法使いです」 「……はい?」 「そして、あなたの奥様も魔法使いでした」  説明も序盤の方なのにもう飲み込めない。僕はうんと不安になったが、小人はお構いなしに『説明』とやらを続けていく。 「魔法使いには掟があります。『魔女を決して怒らせてはならない』と……しかし、あなたはそれをやってしまった。魔女の大切にしていた花瓶を割ってしまったのです。怒った魔女はあなたたちふたりに呪いをかけました。それにより、奥様はドラゴンにされてしまったわけです」 「ちょっと待ってくれよ」  僕は堪らず小人の話を遮った。
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