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 視線を上げると、小人と目が合った。  小人の後ろにはジリジリと燃えるような太陽があって、その真っ白な光に向かって背の高い草が伸びていた。どうやら僕は仰向けに倒れているらしかったが、なぜこんな状態になっているのかはさっぱり思い出せない。 「タクミさん?」  小人が口にした名前に反応して、スッと上体を起こす。それは正真正銘僕の名前だった。 「えっと……君は?」  垂直になった顔の表面から汗が数滴こぼれ落ちる。緑のチョッキに緑の三角帽、先の尖ったブーツ……身近なもので例えるとしたら、350mlのアルミ缶くらいのサイズ感。幼い頃、どこかの絵本で見たかもしれない風貌の小人が僕の目の前に立っている。「小人なんて本当にいるのだな」と変に感心していたら、彼は小さな足でテチテチと地面を踏み鳴らした。 「やっぱりタクミさんなのですね! お待ちしておりました! さあ、こっちです!」  そう言うと、小人は目にも止まらぬ速さでダーッと駆けていく。圧倒されながらも、僕はなんとか腰を上げて小人の跡を追った。伸び放題の草を掻き分けて、喰らいつくように進んで行くと、小人はとある地点でしゃがみ込んだ。驚きつつも、僕も彼の真似をしてその場にしゃがみ込む。 「何事だい?」  なんとなく小声がいいような雰囲気がして、僕は声を潜めた。すると、小人がもっと声を潜めて呟く。 「ドラゴンですよ」 「……え?」  僕は半信半疑になりながら、草を少しだけ掻き分けてみた。
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