スカビオサ

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「ええ、昨日、試しに付き合ってみませんかって酔った勢いで告白したらまさかのOK貰えちゃって」  葵は口を噤む。 「そういえば、スカビオサの花束見たか?あれ、春菜と一緒に選んだんだ」  トドメの一撃は奏馬のこの言葉。 「え──」 「春菜が売ってる店、知ってるって言ったから。今朝、連れて行ってもらった」 「スカビオサの花期は10月頃。丁度今の時期だし、友達の店で売ってるかなと思って昨日聞いたら売ってたの。その……受け取ってくれたら嬉しい……」  はにかんだ笑顔。  奏吾が昨日言っていた通りの素敵な人だと葵は思った。 「──素敵な花束、ありがとうございます」  ぺこりと頭を下げる。  春菜には敵わないという事を、葵は今度こそ察した。 「改めて自己紹介をさせて頂きます。葵……。如月奏馬の妹、如月葵と言います」  葵は自嘲気味に言った。  三人で食卓を囲む。  美味しそうな料理が葵の前に並べられるが、もう何を食べてもダンボールをかじっている様にしか葵は思えなかった。 「葵、お前昨日なんかあったのか?」 「何も無いよ」  心配そうに覗き込んでくる奏馬。  葵は目を逸らしながら答える。 「でも昨日先に……」 「何でも無いって!!」  大声を出した為か春菜がビクッと肩を震わす。  ごめん、とだけ言って葵は味気のない朝食を終わらせた。 「何も無いなら良いけど。そうそう。また今度、涼太って子を紹介してくれないか?葵の彼氏の事も知りたいんだ」  葵は頭から冷たい水を浴びせられた様な感じがした。  昨日バルコニーで奏吾と交わしたあの会話が葵の脳裏をよぎる。  何故奏馬が涼太を葵の彼氏だと思い込んだのかは聞く間でもない。  きっと奏吾がそう吹き込んだのだ。  
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