16人が本棚に入れています
本棚に追加
「葵!!お前どういうつもりだ!!」
葵が幼馴染、涼太の車に乗り込もうとした時、奏馬は追いかけて来て、彼女の腕を引っ張った。
「私達、離れた方がお互いの為になると思う」
俯きながら葵はそう答える。
「金の事なら俺が何とかする!!だから!!」
奏馬は必死だった。
葵と奏馬が恋人になって五年経つ。
奏馬は文字通り、葵の為に何だって出来たし、全てやってきた。
だが葵は奏馬から離れていく。
奏馬はどうしても納得いかなかった。
「葵に触れないでくれませんか?」
運転席から涼太が顔を出す。
「葵はこれから僕と海外に行くんです。飛行機に間に合わなくなるから離して頂けませんかね?」
「葵、お前こいつと付き合ったのか?」
葵は肯定も否定もせず、自分の腕を掴んだ奏馬の手を振り払った。
「じゃあね」
冷たく言い放ち、葵は涼太の車に乗り込んだ。
「あお───」
涼太は車を出す。
奏馬はその車を追いかけた。
追いつける筈なんてないのにと葵は溜め息をつく。
葵は今でも奏馬の事が好きだ。
好きだからこそ、葵のせいで奏馬の人生が狂うのを見たくなかった。
もっとスピードを出してと涼太に伝えようとした矢先、道路の向こう側から来た車が奏馬に突っ込んでいったのをサイドミラー越しに見えた。
「危ない!!」
葵の声は虚しくも間に合わなかった。
奏馬は交通事故に巻き込まれ、そのまま救急車に運ばれて行った。
最初のコメントを投稿しよう!