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「服装とかヘアスタイルをいつもと変えてみるとか。雰囲気が変わると、さいぞーも『おっ?』ってなるんじゃない?」
「ほぅ?」
思いがけず少しマトモなアドバイスが出てきたので、わたしは興味をそそられた。
「あんたのファッション、いつも甘辛ミックスカジュアルって感じでしょ? たまにフェミニン系にしてみるとかぁ。髪もまっすぐ下ろしてばっかじゃなくて、巻いてアップにしたりするとガラッと印象変わるかもよ~」
「おぉ……なるほど」
桃は美容師の仕事をしている。それだけあってなかなか的確なアドバイスだと思った。
「あと、さり気ない肌見せね。あんたいつもミニスカートとかショートパンツで脚出してるけど、逆にスリットの入ったロングスカートなんかも男は好きよ。チラリズムってやつ」
「そ、そういうもんなの……?」
「ま、そのEカップの谷間でも強調しとくのが一番手っ取り早いけどね。そしたらさいぞーが勝手に盛り上がるでしょ」
桃がわたしの胸元を指差しながら相変わらずカラッとそんなことを言ってのけたので、がくーんと項垂れた。
「せっかくちょっと感心しかけたのに、またすぐそういうことを……」
「ま、莉子のキャラじゃないかもだけどね。でも、デートだっていくらでも工夫のしようがあるわよ。いつもの焼き鳥屋じゃなく、オシャレなバーにしてみるとかぁ。あと旅行もいいわよ。日常を離れてリゾート地で過ごすだけで自然と開放的になるし……あっ、温泉旅館の露天風呂付きの部屋に泊まるとか! 一緒におフロ入ってそのまま……これは盛り上がるんじゃない~?」
「お、おぉ……? それはいいかも。休みさえ合えば」
そのアイディアには素直に感心した。その場面を妄想し、思わず少しだけドキドキした。
「ま、要は何かスパイスが必要ってことよ。何か試してみたらぁ?」
「う、うん……ありがと。スパイスかぁ……」
そんな話をしたところでネイルの下準備が終わったので、わたしは気を取り直して仕事に取り掛かることにした。
「じゃあ、今日はどんなネイルにする?」
「ド派手にしちゃってぇ♡ このあと合コンなのよ」
「……桃、今彼氏いるんじゃなかったっけ?」
「いつの話してんのよぉ。今は狩り期間中♡ だからアグレッシブに赤とゴールドの組み合わせとか? そんでストーンもモリモリ盛っちゃって~」
「それはまぁ、オーダー通りに塗るけど……」
何と奔放な女か。
こんな感じなので同性の敵が多いみたいだけど、わたしはハッキリものを言うこの友人が嫌いじゃない。
桃の要望通りに派手なネイルを塗りながら、わたしは才造との次の約束に思いを馳せた。
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