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「そ、そうだねぇ……何年も経てば雰囲気が変わってても不思議ではないけどね。でも同一人物っぽいなぁ……マジかぁ。累くん、こっち戻ってきたのかな。家庭の事情って何だったんだろ」
「そこまで聞いてないけど……」
累くんに振られた直後は、やはり多少怒りのような感情もあった。でも、才造といるようになってからは、怒りも悲しみもかなり薄れていた。
今、彼に対する感情がどんなものかというと、正直そこまでの感慨はない。また会いたいだとか、そんなことは一切思っていなかった。
だけど、かつて累くんがたびたび悪夢にうなされていたことだけは時々思い出して心配になることがあった。
「……で、その累くんと何か……?」
才造に話の続きを促すと、何やら困惑したような表情でゴニョゴニョと続けた。
「それで……なんか知らんけど、そいつに付きまとわれて困ってるんだが」
「はっ?? どーいう……」
その時だった。
オープンテラスで優雅にティータイムを楽しんでいたわたしたちの間に、突然一陣の風が吹き抜けるように、何かが飛び込んできた。
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