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「あのな……すげぇ不本意だけど、本音言わないと余計こじれるから言うけど……その、正直なところ、お前のことはきらっ……嫌いじゃな……いや、ムカつくけど、なんか居心地い……いや、いてくれても別にいいかな……みたいな?」
奥歯に物が挟まったなんてもんじゃない。才造の累くんに対して限定で出る天邪鬼モードが発動した。累くんもそれをよく理解しているので、満面の笑みでポジティブ変換をする。
「要するに、嫌よ嫌よも好きのうちですよね♡」
「まぁ……それでいい。でもな……俺は自分の家族に莉子のことは紹介できるけど、お前のことは紹介できない。友人として、ならいいけど、莉子と同列のもう一人のパートナー……っていう風には、とてもじゃないが言えない。色々問題もあるし、正直、親や周りに何て言われるのかと考えると……」
「はい、分かります」
「だから不甲斐ないとは思うけど……そこを開き直るっていうことは、俺の度量ではできない」
そう伝えて、才造は頭を下げた。
そしてわたしも才造に倣った。
「累くん……ごめん。わたしもさいぞーと同じ。累くんとこういう関係にあるってことは、さすがに親に説明できる自信ない……」
「うん、分かってる。それが普通の感覚だと思うよ」
累くんは驚くほど穏やかで冷静だ。まるでそう言われるのを分かっていたように。
「だから……俺らの都合ばっかり押し付けて悪いけど、俺らはこれからも、友人としてだったらお前を受け入れられる。あくまで俺と莉子の共通の友人……せっ、せっく……」
半個室で、周囲もガヤガヤしているので周りに聞こえるという心配は薄そうだけど、才造は一応の羞恥心が働いて声が小さくなった。
でも、累くんには当然そんなものはない。
「お二人公認、および共通&共有のセックスフレンドならいいよってことですか?」
「まぁ……そういうことだ」
累くんがパッと顔をほころばせる。
「なぁんだ、それならこれまでと変わらないじゃないですか♡ 『結婚するからお前とは縁を切ってケジメをつける』なんて言われるんじゃないかとヒヤヒヤしましたよぉ。そんなこと言われたら、僕の人生お先真っ暗ですから。あ~良かったぁ♡」
「……でもな」
そこで才造に視線を投げかけられたので、その続きはわたしから伝えることにした。
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