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3-3 兄、襲来
という感じで累くんとも話がつき、お互いの両親にも結婚の承諾をもらい、とりあえず式場のパンフレットでも取り寄せてみようかという段階の頃。
久しぶりに三人で休みが合ったので、前日の夜からわたしと才造のマンションに累くんがやって来て、三人で過ごした翌朝のこと。
みんなラフな恰好で遅めの朝食を摂っていると、インターホンが鳴った。モニターをのぞいて、わたしはギョッと目を見開いた。
そこに映っていたのは、麦わら帽子にサングラス、タンクトップにアロハシャツ、そしてサルエルパンツという素っ頓狂な姿で、肩に段ボールを担いだ金髪の男であった。
『よぉ、俺~。莉子~、さいぞ~、あーけーて』
そんな軽いノリの男こそ、そう――わたしの兄、頼人であった。
……居留守使おうかな。とも頭をよぎったけど、そんなことをしたらしぶとくエントランスに居座られることが目に見えたので、わたしは素直にオートロックを開けて中に招き入れた。
「うぇーい♪ 突然来ちまって悪いなァ」
「もぉっ、おニィ! 来るなら前もって言ってよね! ビックリすんじゃん」
「いや悪ィ悪ィ。昼から農協の連合の集まりがあんだわ。講演やってくれって頼まれてな。ほれ俺、インフルエンザだから」
「ウイルス持ってんなら来ないで? 感染症と人気発信者の区別もつかない人が、あんまり人前で喋んない方がいいと思う」
冷たくそう言い放つと、兄は構わず高らかに笑った。
「とにかく、行くからって連絡しといたつもりで忘れてたわ。今日、泊めてくんね?」
「はぁ!? そんな急にぃ!?」
「畑は父ちゃんに任せて来たから、一泊くらいどーってことねぇよ。パートの人らもいるしな」
「そういう問題じゃないよ。急にそんなこと言われたって、わたしもう一人暮らしじゃないんだしさぁ」
「俺は別にいいっすけど」
「おっ、さすがさいぞー。話が分かるねぇ。お前みたいなヤツが義弟になってくれてマジ嬉しいよ俺ァ。あっ、とりあえずコレ、手土産兼俺からの婚約祝いな」
そう言いながら、兄は担いできた段ボールをテーブルにドカッと置き、封を開けた。中から出てきたのはとうきび、そしてとうきび。とうきびに次ぐとうきび。今朝畑からもいできたばかりだという。ありがたいけどそんなに食えるかい。
そして箱の最下層から、オトナのオモチャの数々が出てきた。
「さいぞー、あっさりしてそうだしな。コレ使って夜の営み盛り上げてみたらどーかなっていう、兄の思いやり」
「それ大きなお世話っていうの、知ってる?」
「そう言わずに、頑張って父ちゃんと母ちゃんに早いとこ孫見せてやってくれやぁ~。俺はまだ見込みなさそうだし、瑠那も今んとこ子供は考えてないって言うしよぉ」
ガハハと豪快に笑う兄。瑠那というのはわたしのすぐ下の妹の名前だ。
すると、それまでそのやりとりをおとなしく見ていた累くんが横から話に入ってきた。
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