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「なかなかファンキーなお兄さんだね」
兄が去った後、累くんがニコニコしながらそんな感想を口にした。
「うち、5人きょうだいなんだけど一番上と真ん中が特にマイペースで自由なんだよねぇ」
「悪い人じゃないんだけどな、頼人さん」
「いいじゃない、明るくて。僕は好きだよ。もっとお話してみたかったな」
「また夜来るって言ってたし、それまでいれば? でも、お願いだからこれ以上余計なことは喋んないでよ? さっ、3Pなんて単語があのおニィの耳に入ったら、あっという間に地元中に広まって、もう二度と実家の敷居をまたげなくなる……!!」
「地元どころか、SNSで全世界に発信される恐れもあるな。『俺の腐女子な妹がハレンチすぎた』とか」
「やめてェェェェェェ!!! 再生回数稼ぐためなら何でもネタにしそうだよあの人ぉぉぉ!!!」
「え~、そこまでするかなぁ? 地元活性化と関係ないでしょ」
「とにかく、おニィにはわたしたちが三人プレイしてるとか、そーいうことは喋んないでよ!!!??」
「分かったよ。口を滑らせないように気をつけるよ」
その時、累くんのお尻のポケットからピコンと音が鳴った。スマートフォンがメッセージを受信したらしい。それを取り出してチェックしたかと思った途端――彼の顔色が一瞬サッと曇った気がした。
「……累くん、どうかした?」
「え? ううん、何でもないよ」
そう答えた時には、すでにいつもの微笑みに戻っていた。
「僕、ちょっと用事を思い出したから今日はお暇するね」
「そう? 夕方、また来る? 今日は『タウン・ハンター』実写版の配信始まったからそれ見ながらピザ食べようって言ってたじゃん」
「うーん、来られるか分からないから、さいぞーさんと水入らずで過ごしなよ。ごめんね。夜、頼人さんが戻られる頃にまた来られたら来るかも」
「え~?」
じゃあね、と爽やかに累くんはわたしたちのマンションから去って行った。いつもなら才造に帰れと言われてもしぶとく居座るのに、珍しいなと思った。
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