3-3 兄、襲来

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 そんなわけでその日は昼間、才造と二人で日用品の買い物に出かけたり、ネットで結婚式場の情報を集めたりして過ごした。  そして夕方、注文していた宅配ピザが届いたので、人気アニメの実写映画を見ながら食べることにした。  このお店の石窯ピザがわたしも才造も、そして累くんもお気に入りだった。ここだけの話、わたしはどちらかというとピザそのものより、料理について熱く語り合う男子二人の掛け合いが好物なのだけど。  でも致し方ないので、今日は才造と二人でピザを楽しんだ。いや、むしろこの状態が正常なんだけど。 「あっ、やば。タバスコがない!」 「マジか。さっき買って来りゃ良かったな」 「まだあると思ってた~」 「まぁ仕方ない。我慢するか。『タウン・ハンター』早く見たいし、冷めるし」 「そだね」  タバスコのないピザは、やっぱりちょっと物足りなかった。  ネットのサブスクで映画を鑑賞している途中、兄から『今から戻るんでよろしく~』とSINEが入っていた。でも見終わってしばらく経っても、兄はやって来なかった。 「頼人さん、大丈夫?」 「SINE入ってからもう2時間経つよねぇ……道にでも迷ってんのかな。田舎者だから。電話も出ないし……さすがに心配だよね。どーしよ」  実家から乗ってきた軽トラはマンションの来客用駐車場に停めたまま、地下鉄で会合の場所まで向かうと言っていたはずだ。 「俺、駅の方まで行って探してくる。莉子はここで待ってて」 「うん。ありがと、さいぞー」  才造が出かけようとした瞬間、インターホンが乱暴に鳴った。慌ててモニターを見ると――そこにはやたら機嫌の良さそうな兄の顔が映っていた。さらにその両隣に、それぞれ見知った顔がひとつずつ。これまたニコニコ顔の累くんと、そして反対隣はというと、わたしと才造の高校時代の友人である浅香桃(あさかもも)だった。  わたしたちは二人揃って顔を凍りつかせた。この組み合わせは悪夢の予感しかしない。
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