1-3 元カレが今カレのストーカーになっていた件

4/8
前へ
/236ページ
次へ
「く~さ~だ~さぁぁぁ~~~~~~~~~ん!!!!!」  ガバァァァァッ!!!!!  と、人間がいきなり才造に抱きついてきたらしい。  ビクゥッッッ!!!  とハチャメチャに驚いて、思わず手に持っていたカップを落としそうになった。だがわたしには目もくれず、その人物は才造に向かって嬉々として喋り始めた。 「こんなところでお会いできるなんて……嬉しすぎて言葉になりません♡ 今、こういうところで草田さんとデートできたら幸せだろうなぁ……なんて妄想しながら歩いていたんです。そうしたら本当に目の前にいらっしゃるだなんて……運命ですか? 運命ですよね、これ? お会いしたくてお会いしたくて、わなないていたんです。貴男(あなた)のお顔が見られない休日が恨めしくて恨めしくて……」  わたしはバクバク鳴る心臓を押さえながら、マシンガントークで才造に話しかけるその人物へ目を向けた。そしてまじまじとその顔を凝視し――その結果、口元がピキーンと引きつった。  才造は心底迷惑そうな顔をしながら、その男――今まさに話題に上がっていた人物――を、自分から引き剥がそうとググッと相手の顔を押した。蕁麻疹でも出てそうだ。 「大崎……なんでこんなとこにまで現れんだよ。とりあえず離して」 「つれないですねぇ。そういうところがまたいいんですけど♡」 「やめてくんないマジで。見りゃ分かると思うけど、今、連れがいんだよ」 「あっ、これは失礼しました。こちらは草田さんの――」  そこで、その男はようやくわたしの方へ顔を向けた。  驚きだとか、冷や汗だとか、混乱だとか、ドン引きだとか、苦虫を噛み潰したとか――そういう類のものを全部載っけたわたしの顔を見て、彼もまたハッと驚いた顔をした。 「えっ? 莉子……ちゃん?」 「るっ……累……くん」  そう――わたしの元カレ、累くんその人。ガラリとイメチェンしているものの、この完璧なまでに整った顔は見間違えるはずもない。
/236ページ

最初のコメントを投稿しよう!

77人が本棚に入れています
本棚に追加