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「く~さ~だ~さぁぁぁ~~~~~~~~~ん!!!!!」
ガバァァァァッ!!!!!
と、人間がいきなり才造に抱きついてきたらしい。
ビクゥッッッ!!!
とハチャメチャに驚いて、思わず手に持っていたカップを落としそうになった。だがわたしには目もくれず、その人物は才造に向かって嬉々として喋り始めた。
「こんなところでお会いできるなんて……嬉しすぎて言葉になりません♡ 今、こういうところで草田さんとデートできたら幸せだろうなぁ……なんて妄想しながら歩いていたんです。そうしたら本当に目の前にいらっしゃるだなんて……運命ですか? 運命ですよね、これ? お会いしたくてお会いしたくて、わなないていたんです。貴男のお顔が見られない休日が恨めしくて恨めしくて……」
わたしはバクバク鳴る心臓を押さえながら、マシンガントークで才造に話しかけるその人物へ目を向けた。そしてまじまじとその顔を凝視し――その結果、口元がピキーンと引きつった。
才造は心底迷惑そうな顔をしながら、その男――今まさに話題に上がっていた人物――を、自分から引き剥がそうとググッと相手の顔を押した。蕁麻疹でも出てそうだ。
「大崎……なんでこんなとこにまで現れんだよ。とりあえず離して」
「つれないですねぇ。そういうところがまたいいんですけど♡」
「やめてくんないマジで。見りゃ分かると思うけど、今、連れがいんだよ」
「あっ、これは失礼しました。こちらは草田さんの――」
そこで、その男はようやくわたしの方へ顔を向けた。
驚きだとか、冷や汗だとか、混乱だとか、ドン引きだとか、苦虫を噛み潰したとか――そういう類のものを全部載っけたわたしの顔を見て、彼もまたハッと驚いた顔をした。
「えっ? 莉子……ちゃん?」
「るっ……累……くん」
そう――わたしの元カレ、累くんその人。ガラリとイメチェンしているものの、この完璧なまでに整った顔は見間違えるはずもない。
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