3-5 タマスィーに火を点けろ

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3-5 タマスィーに火を点けろ

 そして迎えた日曜日。  わたしと才造、そして累くんと桃の四人で早起きして地元へと赴くことになっていた。移動手段は才造の車。社会人になる時にお兄さんから譲り受けたコンパクトカーだ。結婚したら、子供が生まれる前にファミリーカーに買い替えようかと話している。  早朝、累くんはそれまでの明るい茶髪から黒髪にイメチェンして待ち合わせ場所に現れた。 「えっ、どうしたの? 別人みたい」 「え、黒髪も似合う? 惚れ直した?」 「そこまで言ってないけど」 「うん、もうすぐ母の三回忌で法事があるからさ。一応施主だし、大人しくしておこうと思って。親戚にもうるさい人がいるし」 「あぁ……そっか」 「それより早く出発しようよ。莉子ちゃんたちの地元、楽しみだな」  累くん本人の言うように惚れ直したとまでは言わないけど、昔、初めて出会った頃の印象に戻ったなとは思った。チャラさが影を潜め、いいとこのお坊ちゃまに少し近くなった。  まぁ、ヘラヘラした笑顔はこれまで通りなんだけど。  故郷の村までは、今住んでいる街から車で2時間ちょっと。  才造と桃の実家は村の中でも比較的市街地にあるけれど、わたしの実家はそこからさらに農道を30分ほど走った先にある。  兄に指定された集合場所は、市街地の中心近くにある農協。その研修室をわざわざ借りて、婚活パーティーに参加予定の農業男子たちを集めたらしい。 「おぉ~、莉子か! なんだおめ、すっかり都会の女になっちまってよ!」 「いや、こんなちゃっこい頃からめんこかったもなぁ。この村のマドンナが、街さ行ってさらに磨きかけてきたんだべ!」 「マドンナっておめ、死語だべぇ!!」  わたしにとってはものすごい耳馴染みのある訛り言葉で、ドッと笑いが巻き起こった。うん、明るい農村だわ。 「野郎ども、今日はよ、この俺の妹とその友達の桃ちゃんが! おめぇらをプロデュースしてくれっからな! 楽しみにしとけェ!!」 「どーもー、桃でぇす♡ 実家はすぐそこの生協の裏で、西高普通科出身でぇす」 「あっ、覚えてんぞ! 桃ちゃん、マサヤと付き合ってた娘だべ!」 「マサヤって誰だっけ。元カレいっぱいいすぎて覚えてなーい」 「すげぇなぁ! 都会の女は言うことが違うな!!」  いや待って。街に出た女子がみんなそんなビッチと勘違いされては困る。
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