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3-7 急転直下
その夜は才造と二人でベッドに入り、スタンドライトの灯りで結婚式場のパンフレットを眺めながら、式のことを軽く相談し始めた。
「結婚式、どうしよっか。さいぞーはやっぱりチャペルでやりたい?」
「莉子は洋装の方がより似合うと思う。純白のドレス、着てんの見たい」
「そう言ってくれるのは嬉しいけど、さいぞーは和装が断然似合うと思うんだけどなぁ~。紋付き袴、絶対カッコいいよ」
「なら披露宴のお色直しで着ればいいじゃん。写真だけ撮るとか。うちの兄貴もそうしてた」
「でもそれ言ったらドレスだって同じだよ」
「まぁな。俺はそこまでこだわりないし、信心深くもないから、莉子のやりたい方でいい」
「わたしも別にどうしてもってわけじゃないからなぁ。じゃあ、式場見学してから決めよっか。まだ時間もあるしね」
「うん。そもそも日取りも決めてないという」
「そうなのよ。でもさ、こうやって悩むのも楽しいよね。衣装に合わせてネイル考えるのも楽しみだなぁ。自分でやるか、他の人に頼むか……ヘアメイクは桃にお願いして、とか」
「うん」
突然、才造がフフッと思い出したように笑った。
「何?」
「や、莉子、結婚することもう職場で言った?」
「うん、指輪してるから自動的にバレた。さいぞーは?」
「俺は式の日取り決めてからと思ってたんだけど……何せ歩くスピーカーがいるもんで」
「累くんが言いふらした?」
「他の社員の前で、『さいぞーさん、式は教会式ですか? 神前式ですか? 僕は教会式派かなぁ。純白のドレス姿でチャペルに立つ莉子ちゃん、絶対絵になりますよねぇ? でも和装で三三九度をするさいぞーさんも捨てがたいし……あぁ、なんて悩ましいんだ……! あっ、式って2回挙げちゃいけないんでしょうか!?』とか勝手に騒ぐもんで。んで先輩に『大崎くん、自分の式でもないのによくそんな熱くなれるわね』って言われてた」
その様子が目に浮かんで、思わず声を出して笑った。
パンフレットを閉じてサイドテーブルに置き、灯りを消して才造の腕枕の中に潜り込む。彼の体温を感じて、とても幸せな気分だった。
「ねぇ、さいぞー……累くん、ちゃんと帰ってくるよね」
「えっ、なんで」
「や、何となく……」
「そりゃあ……帰ってくんじゃないの」
「そう……だよね」
少し不安げな声が出てしまったわたしを才造はキュッと抱き寄せ、髪をそっと撫でてくれた。
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