3-7 急転直下

1/5
前へ
/236ページ
次へ

3-7 急転直下

 その夜は才造と二人でベッドに入り、スタンドライトの灯りで結婚式場のパンフレットを眺めながら、式のことを軽く相談し始めた。 「結婚式、どうしよっか。さいぞーはやっぱりチャペルでやりたい?」 「莉子は洋装の方がより似合うと思う。純白のドレス、着てんの見たい」 「そう言ってくれるのは嬉しいけど、さいぞーは和装が断然似合うと思うんだけどなぁ~。紋付き袴、絶対カッコいいよ」 「なら披露宴のお色直しで着ればいいじゃん。写真だけ撮るとか。うちの兄貴もそうしてた」 「でもそれ言ったらドレスだって同じだよ」 「まぁな。俺はそこまでこだわりないし、信心深くもないから、莉子のやりたい方でいい」 「わたしも別にどうしてもってわけじゃないからなぁ。じゃあ、式場見学してから決めよっか。まだ時間もあるしね」 「うん。そもそも日取りも決めてないという」 「そうなのよ。でもさ、こうやって悩むのも楽しいよね。衣装に合わせてネイル考えるのも楽しみだなぁ。自分でやるか、他の人に頼むか……ヘアメイクは桃にお願いして、とか」 「うん」  突然、才造がフフッと思い出したように笑った。 「何?」 「や、莉子、結婚することもう職場で言った?」 「うん、指輪してるから自動的にバレた。さいぞーは?」 「俺は式の日取り決めてからと思ってたんだけど……何せ歩くスピーカーがいるもんで」 「累くんが言いふらした?」 「他の社員の前で、『さいぞーさん、式は教会式ですか? 神前式ですか? 僕は教会式派かなぁ。純白のドレス姿でチャペルに立つ莉子ちゃん、絶対絵になりますよねぇ? でも和装で三三九度をするさいぞーさんも捨てがたいし……あぁ、なんて悩ましいんだ……! あっ、式って2回挙げちゃいけないんでしょうか!?』とか勝手に騒ぐもんで。んで先輩に『大崎くん、自分の式でもないのによくそんな熱くなれるわね』って言われてた」  その様子が目に浮かんで、思わず声を出して笑った。  パンフレットを閉じてサイドテーブルに置き、灯りを消して才造の腕枕の中に潜り込む。彼の体温を感じて、とても幸せな気分だった。 「ねぇ、さいぞー……累くん、ちゃんと帰ってくるよね」 「えっ、なんで」 「や、何となく……」 「そりゃあ……帰ってくんじゃないの」 「そう……だよね」  少し不安げな声が出てしまったわたしを才造はキュッと抱き寄せ、髪をそっと撫でてくれた。
/236ページ

最初のコメントを投稿しよう!

77人が本棚に入れています
本棚に追加