77人が本棚に入れています
本棚に追加
「え……何、どゆこと? 結婚って、だからわたしたちとはできないよ?」
「分かってるよぉ。そうじゃなくて、僕も他の女性と一対一で、ちゃんとした普通の結婚をするんだよ」
わたしが衝撃で何も言葉を発せずにいると、才造がボソボソと口を開いた。
「コイツ……今日、朝イチで辞表出してきやがった。来月には東京に戻るって」
「はい。ご迷惑おかけします」
そう言われても情報の整理が追い付かない。何? 冗談?
「え……待って。他の女性……って、誰?」
「実を言うとね、前々から叔父にお見合いを勧められていてさぁ。これまでのらりくらりかわしてたんだけど、いよいよ断りきれなくなって。黙っててごめんね」
「おみっ……お見合い……えっ、叔父さんって?」
「母の弟なんだけど、うちの家系で代々経営してる会社の今の社長でね。それで取引先のお嬢さんがどうも母の葬儀の時に来ていて、その時に僕のことを気に入ったくれたらしいんだ。お見合い話はその頃からずーっとあったんだけど、まだ母が亡くなって間もないので考えられないって断ってたんだよ。でもね、今回三回忌も迎えたし、そろそろもう一度考えてくれないかって、なかなか諦めてくれなくてねぇ。それで仕方ないから、とりあえず一度会ってみたんだ」
「どっ、どんな人だったの?」
「うん。それがさ、話してみるととても素敵な人だったんだよ」
ケロッとした感じでそう言って、累くんは鞄の中から写真を取り出した。きちんとしたお見合い写真のようだった。
最初のコメントを投稿しよう!