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「お前が! どうしたいかっつってんだよ!! 累の意思うんぬんとか知ったこっちゃねぇ!! 屁理屈こねてごまかしてんじゃねぇよ!!! 人に本音言わせたきゃ、まずてめェらがそうしろや!!! お前らが本当は累にどうして欲しいのか、累のことどう思ってんのか、それぶつけなきゃ累だって本音なんか言うわけねェだろ!! 周りがどう思うかとか、そんなもんも関係ねェ!!!!!」
才造は何も言い返せなかった。わたしもだ。あほ兄なのに。なんか腹立つけど、そのとおりだ。
――だけど、兄はドヤ顔でニヤッと笑って桃の方を振り返った。
「どぉ桃ちゃん♡ 俺、今いいこと言ったくね?」
「その一言がなきゃ、まぁまぁ良かったわね」
やっぱり締まらない兄が、今度はわたしの方をジロリと見る。
「莉子、分かってると思うけどお前もだからな。俺ぁお前を、身近な人間も大事にできないような薄情な娘に育てた覚えはないぞ」
「うん……」
「え、いや。シュンとしちゃうの? 『おニィに育てられたんだっけわたし』とかそーいうツッコミ待ちだったんだけど」
――才造がふぅと息を吐き、しおらしくなった。
「……アイツの情報なんて持ってきて、何するつもりなんすか」
「おニィ、何か心当たりあるの?」
「いや、あるかと言われたらあるような。ないかと言われたらないような」
「何それ? どっちやねん!」
「いいから任しとけ。全国各地に情報ネットワークを持つこのライト様にな!」
「おニィ……まさか、動画で何かする気じゃないよね!?」
「まさかよ~。そんな晒しまがいの行為なんてすりゃあ、イッパツで即アカ停止だべ。俺、顔広いからよ。フォロワー以外にも個人的な農家仲間とか、いっぱいいんのよ」
……農家仲間のネットワークがこの件で何か役立つとは思えないのだが?
なぜか自信満々の兄の顔に、一抹の不安がよぎった。
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