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「やっぱり莉子ちゃんとは気が合うね。でもまさか元カノが恋のライバルになるだなんて、夢にも思っていなかったよ」
「ライバルって……わたしからしたら、元カレが今カレのストーカーになってるなんて意味分かんなさすぎるんだけど」
「ストーカーだなんて、ひどい言い方だなぁ。まぁ、君のそういう歯に衣着せないところに僕も惹かれたわけなんだけどね。僕の好きな莉子ちゃんのままで良かった♡」
「いちいち語尾にハートマークつけるのやめてもらっていい? しかも今更……今はさいぞーが好きなんでしょ?」
「あれ、もしかしてヤキモチ?」
「違う」
何を言ってもニコニコするだけで、まるで手応えがない。別次元の生き物と会話している気分だ。ちょっと頭痛くなってきた。
「だいたい、あんな理不尽な振り方したくせに今更何言ってんの? よくわたしの前に平気で顔出せたね」
この際なので、率直に恨み言をぶつけてみた。あの時言えなかった分だ。
「それは僕もまさか会うなんて思ってなかったし……でも、あの時君を傷つけてしまったことはずっと後悔してたんだ。東京に戻った後、あんまりにもひどいことしたなぁって……」
「まぁ別にどうでもいいけどね、もう」
「できることなら、ちゃんと謝りたかった」
「だからもういいって。そりゃあ、あの直後は言いたいことも聞きたいこともたくさんあったけど……今となってはもうどーでもいいの。あの時累くんにフラれたおかげで、その後励ましてくれたさいぞーと今こうやって付き合ってるわけだしね」
「そうなの? お二人、そんな前から知り合い? 最近じゃないんだ」
「高校の同級生だったの。知り合い歴は累くんよりずっと古いよ。だからもう、累くんの入り込むスキなんて……」
わたしとしては累くんを牽制するつもりだった。才造に手を出してくれるなよと。
でもやっぱり今の彼にはそんな訴えはまるで届かず、またもやうっとりした顔で、斜め上後方75度くらいのことを言い出した。
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