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才造のお父さんがなおも声を震わせながら、自分の息子に詰め寄った。
「そんなことっ……世間からどういう目で見られるか……お前たちだけの問題じゃない。家族まで変な目で見られることになるんだぞ!?」
「そうよ~。私、学校で何て言われるか分かったもんじゃないわよ。『晴香の兄貴って、なんか二人と結婚したらしいぞ。しかもそのうち一人は男だって』とか、そんな噂立ったらどうしてくれるのよ。死にたくなるわ」
と、晴香ちゃんも顔をしかめている。だけど、才造は申し訳なさそうにしながら、それでも動じなかった。
「そうだな……晴香や母さんにも迷惑かけるし、父さんと兄貴の商売にも影響が出るかもしれない。でもせめて、晴香が高校出るまでは待つから」
「そういう問題~!?」
「それで済むと思うのか!? それに問題は他にもいくらでもあるぞ! 子供はどうするんだ!! まさか、莉子ちゃんが二人の子供をそれぞれ生むとでも言うのか!?」
一瞬、わたしと才造は顔を見合わせた。それも昨日二人で話をしていた。
「累くん……彼は以前、自分の子供は欲しくないと言っていました。でもそれももう一度話し合って、もしやっぱり気が変わっているようなら、私はさいぞーさんの子も、累くんの子も生むつもりです」
わたしはそう答え、才造も頷く。
「何をバカなことを……そんなもの、どちらの子なのか分かったものじゃないだろうが! 才造、お前の子じゃない子供を莉子ちゃんが生んでもいいのか!!?」
「別にいい。莉子が生んだ大崎の子供なら、俺もちゃんと愛情を持って育てる」
「なっ……! そんなもの……そんな環境、子供の発育にいい影響を与えるわけがないだろう……!」
「まぁ、普通の環境でないのは否定できないけど……でも、それでもちゃんと愛情を持って接してれば、毒親とか、親がいないよりは多少マシ……だと思う」
「才造、よく考えろ!」
才造のお父さんも、息子の目を覚まそうと必死だ。
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