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「口では何とでも言える。今はそう思っていても、いざそうなった時にやっぱりダメでした、では遅いんだぞ!?」
「分かってる。だからこれまでずっと迷ってた。考えて、考え抜いて、その上でそうしたいと思った」
お父さんが頭を抱えてしまったので、才造と似た性格で控えめなお兄さんも、さすがに両親に同情したらしく、口を添えてきた。
「ちょっ……才造、父さんと母さんの気持ちも考えろよ。誰の子か分からないような子を、父さんと母さんに孫って呼ばせることになるんだぞ?」
それでも才造は淡々と続けた。
「父さんや母さんにも同じように思えと強制はしない。もし自分の孫だって確証が欲しいなら、DNA鑑定もする……俺はどっちでもいいけど」
「才造……!!!」
「父さんや母さんが思ってるような親孝行ができなくて申し訳ないと思ってる」
話せば話すほど、才造は落ち着いて行くように見えた。でも、お母さんはもはや泣いている。お父さんがしびれを切らしたように、ずっと黙っているわたしの父を睨みつけた。
「神尾くん、君らも何とか言ったらどうなんだ!! おたくのお嬢さん、とんでもないことを言い出してるんだぞ!! 君らは何とも思わないのか!!!?」
――父の方を向くと、座ったまま口をへの字に曲げ、腕組みをしながら天井を見上げていた。しばらく考えるような素振りを見せた後、ゆっくりと前を向いた。
その視線がわたしと才造に向く。
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