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3-12 目指せ月9枠
「……よーーーーーく考えたんだな?」
「「はい」」
才造と声が揃った。
「そんだら好きにしろ」
「神尾!!!」
父は、怒りに震える才造のお父さんの方へ体を向け、座布団を外して正座で座り直した。
「草田センパイ……うちの子供らってよぉ、『畑の真ん中にクラブを作る』とか言い出す長男だの、『銀座に山を買う』っつって東京に出てった次女だの、『働きたくないから養ってくれる女の人を探す』とか言う次男だの、『高校出たらすぐNASAに入って宇宙に行く』っつってる三女だの、そったらバカばっかりなんすよ。そん中で、この長女がいっちばん現実的で、街に出てもコツコツ真面目に働いて……これまで俺らに心配かけたり、困らすことなんてなかったんす。その莉子がまさかこったらひっくり返りそうなこと言い出すなんてよぉ……俺も今、正直なまらビックリしてんすよ」
と、方言混じりで言いながら最後、父はナハハと笑った。兄とよく似た笑い方で。
「でも俺ぁ、子供らが自分で決めたことには口を出さねぇ。したいようにすりゃいい。ただ、自分で決めたことには全部自分で責任を持てとはずっと言い聞かせてきたんす」
「しかし……! 三人で家庭を作るなんて、そんなもの上手く行くわけがないだろう!」
その問いかけにも、父はうーんと唸りながら少し口角を持ち上げ、やはりサッパリした口ぶりで返した。
「そうかもしんねえけど、今ここでやめたとしても、のちのち『やっぱあん時諦めなきゃ良かった』って後悔することになんすよね。上手く行かなくて『やっぱやめときゃ良かった』って後悔すんのと、どっちがいいんすかねぇ。俺も正解はわっかんねえっすけど」
才造のお父さんが、一瞬グッと言葉を詰まらせた。
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