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この日の最後のお客様だった二人の花嫁さんたちをお見送りし、先輩スタッフたちと談笑しながら閉店作業を終えると、時計は21時近くを指していた。
「あれ、莉子ちゃんの彼氏じゃない? 待ち合わせ?」
先輩に言われて店舗の窓から外を覗くと、道路を挟んだ向かいのコンビニに入って行く男の姿が見えた。その見知ったシルエットは、確かにわたしの今カレ――才造だった。
「明日休業日だし、向こうも休み取ったって言うんで、焼き鳥でも食べに行こうってことになってて」
「え~、デートで焼き鳥ぃ? もうちょっとオシャレな店じゃなくていいの?」
先輩に少し呆れられてしまった。
「ん~……もう付き合いも長いし、あんまり気ぃ張らないところの方が楽なんですよねぇ。だいたい居酒屋とか赤提灯とか、そんな感じかな」
「もぉ、サラリーマンのおっさんじゃないんだからぁ。たまには気を張らないとマンネリしちゃうわよ」
「あははっ、気をつけます~。じゃ、お疲れ様でした~」
先輩からのアドバイスを笑って聞き流すフリをしたが、ここだけの話、わたしは内心少しだけギクリとしていた。
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