Episode:1-1 対岸の多様性。

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「課長がいい人なんだけど熱血すぎて……この前血走った目で『お前も社畜にならないか?』って言われた」 「鬼だね、その人。太陽の光とか苦手じゃない?」 「そうかもな。夜の方が元気だし」 「で、何て答えたの?」 「どう答えるべきか分からんくてしどろもどろしてたら、『真に受けんな。真面目か』って怒られた。理不尽じゃね?」 「あははッ、さいぞーのことよく分かってくれてるじゃん、その課長さん」  笑いながら相槌を打つと、才造も可笑しそうにハハッと笑った。  だいたいいつも、会えばこんなノリで時間を過ごす。  いつものように仕事終わりに待ち合わせをして、いつものように焼き鳥を食べたその後、この日はわたしの部屋に才造が泊まった。  シャワーを浴びて適当な部屋着に着替え、テレビを見ながらダラダラ缶ビールを飲み直しているうちに、結構遅い時間になった。 「さて、そろそろ寝よっか」  わたしがそう切り出し、才造も素直にうんと頷く。 「今日、する?」 「どっちでもいいけど……」  どっちでもいいって何だよ。と思いながらもわたしが決めた。 「じゃ、しよっか」 「うん」  電気を消して一緒にベッドに入り、キスをしながら抱き合った。才造と触れ合うこの時は、わたしにとって大切な時間。彼の愛情を感じて幸福な気持ちになれるから。  もうお互いの体のことを知り尽くしているので、効率よく興奮を高め、効率よく事を進めた。 「ごめ……先にイッちゃった……」 「うん……いいよ」  やがて才造が先に果てたので、わたしは彼の胸に耳を当て、その心臓の音を聞いた。バクバク鳴っていた鼓動が少しずつ落ち着き、満足したようにやがてそのまま眠りについてしまった。  寝顔が可愛い。体だけ大きいウブな少年みたいだと思った。  安定した関係性。いつもと変わらない安心感――  だけど、わたしは一抹の物足りなさを感じていた。
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