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「課長がいい人なんだけど熱血すぎて……この前血走った目で『お前も社畜にならないか?』って言われた」
「鬼だね、その人。太陽の光とか苦手じゃない?」
「そうかもな。夜の方が元気だし」
「で、何て答えたの?」
「どう答えるべきか分からんくてしどろもどろしてたら、『真に受けんな。真面目か』って怒られた。理不尽じゃね?」
「あははッ、さいぞーのことよく分かってくれてるじゃん、その課長さん」
笑いながら相槌を打つと、才造も可笑しそうにハハッと笑った。
だいたいいつも、会えばこんなノリで時間を過ごす。
いつものように仕事終わりに待ち合わせをして、いつものように焼き鳥を食べたその後、この日はわたしの部屋に才造が泊まった。
シャワーを浴びて適当な部屋着に着替え、テレビを見ながらダラダラ缶ビールを飲み直しているうちに、結構遅い時間になった。
「さて、そろそろ寝よっか」
わたしがそう切り出し、才造も素直にうんと頷く。
「今日、する?」
「どっちでもいいけど……」
どっちでもいいって何だよ。と思いながらもわたしが決めた。
「じゃ、しよっか」
「うん」
電気を消して一緒にベッドに入り、キスをしながら抱き合った。才造と触れ合うこの時は、わたしにとって大切な時間。彼の愛情を感じて幸福な気持ちになれるから。
もうお互いの体のことを知り尽くしているので、効率よく興奮を高め、効率よく事を進めた。
「ごめ……先にイッちゃった……」
「うん……いいよ」
やがて才造が先に果てたので、わたしは彼の胸に耳を当て、その心臓の音を聞いた。バクバク鳴っていた鼓動が少しずつ落ち着き、満足したようにやがてそのまま眠りについてしまった。
寝顔が可愛い。体だけ大きいウブな少年みたいだと思った。
安定した関係性。いつもと変わらない安心感――
だけど、わたしは一抹の物足りなさを感じていた。
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