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「でもあんた達の場合、さいぞーの性格もあるわよね。莉子あんた、あんな淡白でボーッとした男とよく何年も付き合ってるわね」
「それ桃が言う? 他のみんなと一緒になってさいぞー焚きつけたくせに」
わたしが口を尖らせて抗議すると、桃はケラケラと笑った。
高校時代の才造は、とにかくモサかったのだ。冴えない円縁メガネにボサボサの癖っ毛、いつも眠そうな魚みたいな目。勉強はできるけどそれ以外は鈍臭くて、たまにボソッと喋ればどこかズレた発言ばかり。「クソダサいぞう」とあだ名が付いた所以だ。
ともすればいじめの対象になってもおかしくなさそうなキャラなのに、モサい見た目をイジられても特段気に留める素振りも見せず、クラスのみんなからさいぞーさいぞーと呼ばれて不思議と可愛がられていた。
卒業後、街に出てきたばかりの頃も、いつも同じようなヨレヨレのパーカーやジーンズを身に着けて、寝癖をつけたまま平気で出歩くような無頓着ぶりだったのだが――
わたしが累くんに振られて落ち込んでいた頃、桃をはじめとした友人たちが「莉子を落とすなら今がチャンスだ」と才造を煽り、まずその見た目をどうにかしろとヘアスタイルやファッションを上から目線でアドバイスして改造したらしい。その結果、元々の顔のパーツは悪くない上、背が高く割と筋肉質な体つきだったこともあり、思っていた以上に化けたのでみんな驚いたのだ。
その裏話をわたしは後から聞いたのだが、その策略にまんまと嵌められて今に至るというわけだ。
そんな経緯があったので、わたしはその友人たちには感謝しているけれど、桃は今でも才造のことを下に見ている節がある。
「でもねぇ、正直あんたたちがここまで続くとは思ってなかったわよ~。そもそもね、あたしはまさか莉子がさいぞーの告白OKするなんて思わなかったしぃ。さいぞーが多少垢抜けたからって、莉子のビジュアルならもっといい男狙えたでしょ」
「え~……わたしなんて美人でも何でもないじゃん」
「そんな天然素材でクリクリお目々のアイドルみたいな顔してるくせにそんなこと言ってると、嫌味に聞こえるわよ。そのうち僻んだ同性に刺されても知らないから。実際、さいぞーの前は超美形ハイスペック彼氏を捕まえてたわけでしょ? 当時、ずいぶん惚気てたじゃな~い」
わたしは一瞬ぐっと言葉を詰まらせた。
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