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「前の人の話は……やめて」
「なんでぇ? まだ元カレに未練あったり?」
「なんでそうなるの。あるわけないじゃん。あれ以来会ってないし、どこで何してるのかすら知らないし。今はさいぞー一筋ですぅ」
4年前、累くんはわたしと別れたあとすぐ大学を退学して生まれ故郷の東京へ戻ったらしい。家庭の事情だとか何とか、風の噂でそんなことを聞いたけれど、それ以降音沙汰はない。
累くんとの一連の顛末は、桃や才造を含む友人たちに報告や相談はしていたけれど、みんなと累くんに面識はない。
「まあね、さいぞーも少し磨いてやったら想像以上に光ったから、もし莉子にフラれたら一回くらいあたしが味見してやってもいいかなーなんて思ったけどぉ」
アハハと笑う桃。なんて女だ。
「っていうのは冗談だけど、そのさいぞーともマンネリしてるんでしょ? そりゃ長いこと同じ相手とばっかり続けてたらそうなるわよ。あたしは同じ男とそんなに続いたことないからよく分かんないけどぉ。飽きたんなら違う相手に乗り換えるのが一番手っ取り早いわよ。別れて次に進んじゃえばぁ?」
「ごめん、わたし相談する相手間違えたかも」
割と本気でそう思った。
「莉子って見かけによらずマジメよねぇ。まぁ、マンネリしてきたんなら普段と違うことしてみればいいんじゃないのぉ?」
「違うことって?」
「そうねぇ、たとえば……」
桃は含み笑いを浮かべてうーんと唸って見せた。
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