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「それは……春川と同じ理由かな」
先輩の言葉に驚き、思わず先輩の顔を見上げる。
少し背けた先輩の顔は赤く、口元を手の甲で押さえている。
ただ会いたくて。自信のない自分でも堂々と会える理由が欲しかった。
「いえ、私と同じだなんてそんな訳がないです……」
「え、あ、ご、ごめん。俺ちょっと自意識過剰だったな」と先輩は気まずそうに更に顔を背ける。
これは、どういう事なんだろう。
本当に先輩が私と同じ気持ちだと?
そんな事ってあるの?
「そうだよな、春川は俺の事そんなに知っているわけではないだろうし。俺はとにかく春川に会いたくて来てしまったけど……ごめん、余計だったな」と決まり悪そうに両手を軽く上げた。
―――会いたくて。
その意味を都合の良いように解釈していいのかな。
カタン、と傘立てに立てたマイ傘が音を立てる。
まるで、その気持ちに同意してくれるみたいに。
私は涙をキュッとハンカチで拭い、先輩に向かう。
「私も……立石先輩に会いたくて、先輩の高校生活を見てみたくて見学会に参加しました。逆に先輩が遠く感じてしまったけど……でも、先輩が私の傘を見つけて届けてくれて、凄く嬉しいです!」
想いを込め過ぎてつい大きな声になってしまったので、先輩が少し引いてしまった。だけどすぐ「良かった」と微笑んでくれた。
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