遠い存在だった先輩が、すぐそばにいる

1/7

17人が本棚に入れています
本棚に追加
/14ページ

遠い存在だった先輩が、すぐそばにいる

「ええええええええっ?」  中学校から帰ってすぐ、朝に使用した傘を乾かすためにポンッと広げた私は思わず声を上げた。  傘が、新しくなっている!?  今朝は雨が降っていたので、愛用の傘をさして登校した。  持ち手が黒猫の手の、ベージュ地に黒猫と白猫が音符と戯れている柄の傘。  吹奏楽部所属の猫好きとしては、たまらなくご機嫌になれる傘。  毎日「今日は雨降るかな?」と傘をさすのを楽しみにしているくらいだ。  だから今日のように昼から雨が上がった日でも、絶対に傘を忘れて帰ったりしない。  学校の傘立てには何本か忘れ去られていたけど、その中でも目立つ黒猫の手の持ち手。  2年間近く愛用しているマイ傘は日焼けや汚れが気になり始め、同じ柄で新しい物が欲しいと思っていたのだけれど……。  その傘が新品同様。  なんで?どうしてそうなった?  そうそう、私の傘には持ち手の根元に『春川菜々美』というお名前シールを貼ってあるんだった。  ……それが無い。  あちゃー、私ったら誰かの傘と間違えて持って帰っちゃったのかな。  だけどあの中に黒猫の手は無かった気がするなぁ…。  学校の傘立ての様子を思い出しながら、この傘のどこかに名前が書いていないか確認する。  あ、留ひものところに名前が書いてある。  ―――立石 萌。  私はその名前に一瞬思考が停止した。  ……うわぁ!立石先輩の妹だぁ!
/14ページ

最初のコメントを投稿しよう!

17人が本棚に入れています
本棚に追加