傘がくれた奇跡

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傘がくれた奇跡

「先輩……?え、あ、その傘……!」  チャイムが鳴ったので玄関のドアを開けると、北山高校の制服を着た立石先輩が私の傘を持って立っていた。 「久しぶり。見学会に来ていたんだな」  少し大人びた笑顔で、先輩が私に黒猫の持ち手の傘を手渡す。 「……ありがとうございます!よくわかりましたね」  お気に入りの傘が戻ってきて、その上先輩にお会いできて思わず涙目になる。 「持ち手に覚えがあったからね。広げてみたらやっぱり春川の名前が貼ってある。担当の先生に確認したけど連絡はまだないって言われたから……って、おい」  私が急に涙を流し始めたので、先輩は驚いたようだ。  だって、すごく嬉しいから。  私は傘を抱え、制服のポケットからタオルハンカチを取り、顔を拭う。 「猫柄、好きなんだな」とハンカチの柄を見て先輩が笑う。  私は無言で何度も頷く。 「泣くほど大切なら、忘れていくなよ」と先輩が私の頭をそっと撫でる。  私は先輩への想いも届けてもらった気分になり、「はい、もう絶対に忘れません……」と呟いた。 「北山高、受験するの?」と先輩。 「いえ……ぐすっ。私の成績ではとてもじゃない、入れません」  顔をハンカチで覆いながら、傘を傘立てに仕舞う。 「そうなんだ。見学会に来ていたからてっきり……だけど何故わざわざ北山高まで?」  そこ、聞きますか。 「先輩こそ、どうして直接傘を届けて下さったのですか?」  別のクラスとはいえ、萌ちゃんにお願いしても良かったのだ。
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