傘がくれた奇跡

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「本当は俺、北山高に入ったはいいけど授業についていくのに必死で、サックスはやっていないんだ。以前に聴きたいって言ってもらったけど……」 「いえ、そんな!確かに聴きたいですけど……」  あの時呟いてしまった言葉が先輩に届き、覚えていてもらった事に嬉しいやら恥ずかしいやらで複雑な気分になった。 「来年。来年の春にはまたサックスを聴かせられるように、勉強も練習も頑張るよ。その時になったら春川に告白させて。俺と付き合ってくださいって」  先輩の突然の告白予約に私は「えええっ!?今じゃないんですか!?」と厚かましくもブーイング。 「だって、春川は今年受験生だろう。部活も大会に文化祭にと忙しくなるし。今度こそ演奏を聴きに行くから頑張れよ」と急に先輩面する立石先輩。  先輩はしょぼーんとする私の頭を撫で、 「俺と春川の縁を繋いでくれた傘、もうどこにも忘れないでくれよ」と微笑んだ。 『お気に入りの傘』が『宝物の傘』に昇格した。
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