遠い存在だった先輩が、すぐそばにいる

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 少し暗くなってきたけど、近いし大丈夫かな。  立石家とは小学校は別の校区だけど、橋を渡ればすぐの所だと知っている。  それは決してストーカーをしたわけではなく、以前萌さんに届け物があるという生徒に一緒にお家まで行っただけだ。  空を見上げると、なんとなく雲行きが怪しい。  傘をまた別に持っていった方が良いのだろうか。  2本持つのかぁ…。  いやもし帰り道に雨が降ってきても、取り替えてもらった自分の傘をさして帰ればいい、などと安易な考えで家を出た。  萌さんの傘を抱えて急ぎ足で橋を渡る。  西の空が黒い雲に覆われており、雨が近い事を知る。  降り出す前になんとか立石家に到着した。  私は呼び鈴を鳴らし、立石先輩が出てきたら嬉しいな、なんて考えながらニヤついていた。 「あれ、春川。どうした?」  開いたドアから立石先輩が顔を出す。 「え、あ、ひぇぇぇぇっ!?立石先輩!?」  願望と現実が一致してしまい、素っ頓狂な声をあげてしまった。  私服では無くて学校指定の体操着で残念だけど、部活での先輩とはまた違った雰囲気で寛ぎ感が伝わりドキドキする。 「部活、終わったのか?…ってその傘、萌の?あれ?」  先輩は不思議そうな顔をして玄関の内側を確認し、もう一度私の手元の傘を見た。 「は、はい!萌さんの傘です。もう帰ってきていますか?」  私が差し出した傘を先輩が受け取る。 「萌は……今、塾に行っていて……この傘を持って行ったはずだけど。まさかどこかに置き忘れていた?」と心配そうな顔。
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