遠い存在だった先輩が、すぐそばにいる

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「当日、観に行けそうなら行くよ。楽しみにしているから」  先輩のその一言で、今すぐ猛練習したくなってしまう私。 「はい、頑張ります」  ……ゲンキンだなぁ、と我ながら呆れる。 「先輩は、高校に入ってもサックスを続けるのですか?」  先輩が話を振ってくれたおかげで、今度は私からスムーズに質問することが出来た。 「うーん、吹奏楽部に入るかは決めていないけど……何らかの形で続けたいかな」 「何らかって…何ですか?」 「軽音楽部とか」 「あ、なるほど……」  吹奏楽部での先輩のサックスも素敵だったけど、軽音楽部でのサックスも… 「聴いてみたいなぁ……」  と心の声を口にしてしまい「あ!いえ、その…」とどもりながら、変な事まで口走っていないよね、と慌てて自分の発言を振り返る。  恥ずかしくて先輩の顔が見られない。 「あ!ここです!私の家。送ってくださってありがとうございました!」  門扉を開け、ひょいと傘の下から敷地内に入り、頭を下げる。 「春川の傘は明日にでも学校で萌に届けさせるよ。じゃあ、アンコン頑張って」  先輩は小雨の降る中、もと来た道を歩いて行った。 「はい、頑張ります……」  私は先輩の姿が見えなくなるまで、先輩と一緒に歩いた幸せを思い出しながら門扉の内側で佇んでいた。
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