13. 予想外のヒート

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「なぁ、蒼人。ここ、病院だよな? ……おれ、どうしちゃったんだ……?」  喫茶店で急に身体に変化が起き、その後は途中までの記憶しかない。  理由の分からない身体の熱と疼き……あれは、何だったんだろうって……。 「先生呼んでくる。すぐ戻るから待っていて」  一瞬顔を曇らせた後、蒼人は病室を出ていった。  すぐ戻るとか言っておきながら、なかなか戻ってこない。かれこれ30分は経っていると思う。  先生今丁度忙しいのかぁ。……そう思いながら窓の外を眺めて待っていると、それから程なくして先生を連れて病室へ戻ってきた。いつもオメガの検診をしてくれている担当医だ。 「こんにちは、麻琴くん。具合はどうですか?」 「はい。春岡(はるおか)先生、ありがとうございます。特に気になるところはないです」  春岡先生はぽっちゃり体型で少し白髪交じり。優しさが全体に滲み出てくるような柔和な先生。医者なので時には厳しいことを言わなければならないと思うけど、基本的には物腰柔らかな先生だ。 「点滴を打っていたからね。後から気持ち悪くなるようだったら、すぐ言うんだよ?」 「はい、分かりました」  実際、今のところおれには体調の変化はみられない。  さっきも蒼人が心配していたけど、気持ち悪くもないし、痛みがあるわけでもないし、不快感とかそういうのもない。 「麻琴くんが友だちと出かけたのは土曜日だよね? でも今日は月曜日なんだ」 「えっ?」 「病院に運ばれてきてから、ずっと眠っていたんだよ」 「そんなに?」  おれの意識としては、少しお昼寝をしたくらいの感覚だったので、まさかそんなに時間が過ぎているとは驚いた。 「先生、おれどうしちゃったんですか? 喫茶店でなんか身体が変になるし、気付いたらもう月曜日だし──」 「麻琴くん、少し落ち着こうか」  矢継ぎ早に質問を投げかけようとしたら、先生はおれを落ち着かせるように言葉をかぶせてきた。 「まだ目を覚ましたばかりで、体調は万全ではないよね。詳しい話は後日にしたほうが良いと思うんだ」 「でも……」 「これはね、主治医からの指示だよ。今日はゆっくり休んで、明日の朝話をするから」  先生の言う通りだ。二晩も眠り続けていたんだ、普通の状態なわけはない。  おれは大人しく先生の言葉に頷くと「はい、分かりました……」と、消え入るような声で返事をした。
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