25. 二度目の入院

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「おれ……。お前に隠し事されるの、嫌なんだ……」  この肩の痛みの原因の話だけじゃない。どうして休学したのとか、婚約したこととか、聞きたいことはたくさんある。  でも蒼人は、きっと……おれのためだと思って、全部隠してきた。大丈夫だからといって、伝えようとしてくれなかった。  努めて冷静でいるように頑張ってみるけど、段々と声が震えてしまう。   「……麻琴を、傷付けるなんて……許されることじゃない。……おれは、あいつを許さない──」  おれに背を向けたままで、ブツブツとほとんど聞き取れないような声でつぶやく。  この前の喫茶店の事件で、蒼人の過保護は増した。本当はずっと側にいて守りたいと思ってくれていると思う。  でも、事情があっておれから離れて生活しなくちゃならなくて、蒼人の中での葛藤は相当なものだったんじゃないかな。  それなのに、おれはまた事件に巻き込まれちゃったのか……。  頭でも強く打ったとか、何かあったのかも知れない。学校での記憶が途中から白い幕で隠されたみたいに、見えてこない。  すべてを思い出して、蒼人が自分を責めることはないんだって言ってやりたいのに、ごめんな、思い出せないんだ。  蒼人との関係をずっと兄弟のようなものだと信じて疑わなかった。  この感情も、家族へ向ける敬愛の印だと思っていた。  でも、それは違っていたんだな。……いや、違ってはいない。それ以上の感情だったってこと。  いつもそばにいるのは蒼人で、それがとても心地よくて安心して。    蒼人のことが好きだと自覚する前から、おれは無意識に蒼人を求め、側に居続けたんだと思う。  これからもずっと、一緒に並んで歩み続けるのは蒼人以外考えられないとそう思っていたのに、『婚約者』の存在は、おれの思い描いていた未来予想図を簡単に消し去ってしまった。    おれは、もうすぐ蒼人の側から離れることになるだろう。それなら最後の思い出に、おれの心の内を伝えてしまおうか。  驚くだろうな……。そんな姿を心の中で想像すると、思わず口元が緩む。  ベッドからゆっくり降りて、蒼人の背中にそっと抱きついた。おれが抱きつくと、蒼人はびくっと震えた。  とても暖かい。ずっとおれを守ってきてくれた背中だ。大きな背中に、頬擦りをする。
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