28. 運命の番?

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28. 運命の番?

 安心してクスクスと笑い出したおれを、蒼人(あおと)は愛おしそうにぎゅっと抱きしめたあと、まるで猫が甘えるように、頭を撫でたり頬擦りをしたりした。  ……これ、完全にマーキングだよな……。  そう考えたら、急に恥ずかしくなる。  アルファは、自分のモノにはフェロモンを纏わせ、他の者へ威嚇する習性がある。  蒼人はずっと直ぐ側にいて、周りへの牽制をし続けていたということだ。  佐久(さく)くんと飯田(いいだ)くんに、『森島(もりじま)くんがいて近寄れなかった』と言われたのを思い出した。  蒼人がいれば良いと思っていたから深く考えなかったけど、おれに友だちが出来辛かったのは、そういう理由だったのか……。  でも、蒼人が離れた途端、トラブルに巻き込まれたことを考えると、蒼人の幼い頃からの行動は間違っていなかったってことだよな。  最悪な事態にならなくて、本当に良かった……。  おれの心にずっと燻っていた『蒼人の婚約者』は、佐久くんの作り上げた幻で、そんなものは初めから存在しなかった。  飯田くんが婚約者だと思って身を引こうとしていたけど、その必要はなくなったということ。  それならば……。  そこまで考えて、おれは蒼人に遠慮がちに声をかけた。 「……昨日さ。……返事はいいって……言ったんだけど……」  伝えたかっただけだからと言ったものの、本当は蒼人の気持ちを聞くのが怖かっただけなのかもしれない。  でも、おれが気持ちを伝えたあとも、蒼人の態度はひとつも変わらない。変わらないどころか、甘さを増していると感じるくらいだ。  そんな蒼人が、おれに寄せてくれているだろう想いは、きっとおれと同じ……いや、それ以上なんだと思う。 「蒼人の……返事が、聞きたい……」  おれを抱きしめている蒼人の腕を、そっと撫でながら言った。  心臓が口から出そう。漫画でそんな表現があるけど、本当に今そんな感じだ。  ドキドキとした鼓動がどんどん大きくなる。  すると、おれを抱きしめていた腕が緩み、すっとおれを立ち上がらせた。  そしてくるりと回転させられて、蒼人と向かい合う形になる。  蒼人は座ったままだから、おれを見上げる形になっているのだけど、イケメンの上目遣いの破壊力はすごいな。
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