28. 運命の番?

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 事の発端はそこだ。  蒼人がおれから離れなければ、起きなかった出来事かも知れない。  そう考えてしまうほど、蒼人の休学というのは大きな問題だった。 「契約上、全てを話すわけにはいかないんだけど、多少なら大丈夫だと許可をもらってきた」 「契約?」 「とある治験に参加している。データなど完全管理するため、休学して寮に入ってたんだ」 「治験……」 「今回は、麻琴が事件に巻き込まれたから、例外で外部との連絡や接触を許可してもらっている。本来ならば、完全に遮断すべきなんだけど」 「……だから、連絡が取れなくなったんだ」  休学する前に、理由は話せないけど必ず戻ってくるから待っていてほしい、と言っていた意味はこれだったんだ。  蒼人は誰にも話せずに、そのままおれのそばから離れなければならないなんて、辛かっただろうな。 「ちょっと明日確認を取って、大丈夫そうなら麻琴も連れていきたい」 「……え? おれも?」 「もうこれ以上、麻琴のそばを離れていられない。また何かあったらと思うと……」  直前までニコニコしていた蒼人から、急に笑顔が消えた。  おれだって、思い出すと身体が震える。  ……それに、関わっていたのが、まさかあの二人だったなんて……。 「麻琴もそばにいられる形で、治験を続けられないか聞いてみるよ」  今日は話はここまでにして、また明日にしようということになった。  まだ本格的に体調は戻ってないんだし、午後は休んでと言われたので少し眠ることにした。  蒼人はそのまま帰るのかと思っていたら、夕方目を覚ましたおれの枕元に座っていた。 「あれ? 帰らなかったんだ」 「うん、ちょっと電話してきた」  話を聞くと、さっき言ってた治験先に連絡をしてきたらしい。 「退院したら、麻琴も連れて一度来てほしいって。話がしたいそうだけど、麻琴はそれでいい?」 「それで、蒼人が安心するなら」 「良かった。じゃあ、また退院後に話を進めよう」  ホッとした様子の蒼人を見て、おれもホッとした気持ちになった。  やっぱりおれも、蒼人の側にいたいんだ。それが一番安心するから。
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