31. 巣作りと約束

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 視線が重なると、蒼人は嬉しそうに微笑んだあと、おれの鎖骨、首筋、耳……と、あちこちを啄むように唇を落としていく。まるで、自分の所有物だと主張するかのように。  そしておれの頭を支えて、唇を押し付けるように重ねてきた。  二度と離れないという、強い思いを感じるようなキスだった。  しばらく、キスをしたり抱きしめ合ったり、胸元に顔を埋めてスリスリと甘えてみたり、ヒート明けの甘い二人だけの時間を過ごした。    その日の午後、医師の診察を受け、オメガフェロモンの数値を見てもらい、ヒートが終わったことを確認してもらった。    オメガの発情期は一般的に三ヶ月に一回、七日間ほどヒートが続くと言われている。  けれど、おれの周期はもう少し短くなる可能性があると言われた。  今回のヒートでは、抑制剤を使っていないのに、四日ほどで治まった。  一回のヒートが短い人は、ヒートの間隔が短い傾向にあるらしい。    次のヒートで番になりたいと約束をしていたから、その日までの期間が短いかもしれないと思うと、何かソワソワしてしまう。  ただ、ずっと蒼人と一緒にいたから、早く治まった可能性も捨てきれないみたいだけど……。    蒼人とおれが参加した治験は第二段階で、ここで抵抗薬の効果が認められると、次にもっとたくさんの人を対象に治験が行われるらしい。    おれと蒼人は、卒業後にこの薬の研究開発をしている製薬会社の企業内大学への進学が決まっていて、進学後、学びながら再び治験への参加をすることになっている。  このまま施設にいる許可は得ていて、これから三月末までは、寮で進学に向けての準備をする。  卒業後は、治験者向けではなく、学生向けのアパートに引っ越しをしてそこで生活をする予定だ。    第二段階の治験も終わり、第三段階は極秘ではなくオープンプロジェクトになるため、少し早いけれど、家族には経緯を話す許可が降りた。  なので実家へ連絡をし、進路のことや蒼人とのこと、これからについて話に行く約束を取り付けた。
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