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「こんばんわ、DJサーモンです! さて、七夕も終わり、次は待ちに待ったお盆! いや、まあ、そんなわくわくイベントではないにせよ、ご先祖さまとゆっくりまったり実家で過ごしたいと計画される方も多いのではないでしょうか。  と、いうわけで、そんなまったりな休日にじっくり読みたいコミック、『死神オフィスカジュアル』の作者、死神さんに本日はお越しいただいています。  死神さん、どうも〜、はじめまして」 「こんばんは〜。はじめまして」 「あー……死神、というペンネームから勝手にその〜、ダークファッションの方かと思ってったんですけど……。意外と……きらきらしてますね♪ ああ、ラジオだかからリスナーさんたちに見えないのがすっごく残念なんですけど。死神さん、イケメンですよ! シャイニー素材のシャツ着こなされてる感じでこう、中性的な」 「サーモンさん、こんなの今、性別関係なくみんな着てますって。まあ……なんでしょうねえ、仕事柄、反動でつい派手なもの選びがちで」 「死神さんは確か、兼業漫画家さんでいらっしゃいましたよね。お差支えなければ、漫画を描かれているとき以外にはどんなお仕事を?」 「運び屋です」 「……ええと。どのようなものを?」 「ふふ。まあ、言えないもの?」 「わ! 作品同様、なんともミステリアス! ますます気になる……。え、重いものですか?」 「うーん。まあ、あ、でも自立歩行するんで、力はいらないかな」 「自立歩行……。生き物、なんですか? もしかして」 「生きては、いないかな? まあ、いいじゃないですか。そろそろ作品の話もしたいな」 「失礼しました! ええと、じゃあ、『死神オフィスカジュアル』についてお話伺っていきたいんですけども」 「ぜひお願いします」 「まず第一に。漠然とね、死神ってあのファッション、好んで着てるんだと思ってたんですよ」 「サーモンさんはどんなイメージですか? 死神のファッション」 「やっぱりあれですよね。黒い……ケープ? ローブ? フードつきの外套? 黒マント? あれ着て、鎌持ってますよね」 「大鎌とか草刈鎌とかね」 「最近だと黒スーツの死神、多くありません?」 「ああ〜、多いですねえ。喪服着たタイプ」 「やっぱり死神といえば黒ってことですかね」 「の、ようですね。まあ、でも時代や場所、宗教、宗派によって死神の見た目は違いますし、そもそも死神という概念が存在しない地域もあります。ですから一概にはいえませんが、こと創作において真っ先に頭に思い浮かべられるものといえば、今、サーモンさんが仰った姿でしょうね。ところでサーモンさん。あなたが死神だとして、サーモンさんはあの服、着たいですか?」 「え、あ、黒スーツの方じゃなく、黒マント? のほうですよね?」 「そうそう」 「あー……。まあ、着たいですかね!」 「ほう?」 「だってかっこよくありません? 黒。俺、戦隊ものだったら絶対、ブラックになりたかったタイプです」 「戦隊ものってブラックいましたっけ? 赤、青、緑、黄色、ピンクが一般的だったような」 「いやいや、いましたよ。ブラック。大体、ブラックは一匹狼なんです!」 「一匹狼……。サーモンさんのイメージとちょっと違いますね(笑) サーモンさんは黄色のイメージですけど。ほらカレー片手に戦ってそう」 「(誰が黄色やねん! 誰がカレー片手に戦ってんねん!)  まあ、でも好きであの服着てる死神だっていたんじゃないかなあ。それを主人公が、死神界にも服装の自由を! とか言い出してオフィスカジュアルにしちゃって。戸惑った死神もいたかもしれませんねえ」 「まあ、そうかもしれませんね。僕の知っている中にも何人かそういう意見を持つ者はいましたね」 「知ってる中にも? まるでご自身がガチで死神のような口ぶり。面白いなあ、死神さんって」 「たとえですよ。僕が創作したキャラの中には、という意味です」 「それは失礼しました♪ っと、話し戻すと、『死神オフィスカジュアル』。面白い台詞ありますよねえ。僕はこれが気になったなあ。 『黒は女を美しく見せるって言うけど、死神にはそれあてはまりませんから! そもそも美しさ、求められてませんから!』  確かに(笑) 美しさはいらない。にもかかわらず、昨今の創作界隈に出て来る死神って美しすぎじゃありません? 死神なんて不気味、不吉、不機嫌、の三拍子でいいじゃないですか。ねえ?」 「死神に対して悪意がありますね。さっきから」 「いえいえいえ! そんなことは。まあ、でも実際、この物語、進んでいくとオフィスカジュアルが思わぬ火種になったりしてますよね。華美ではなく、露出を押さえた服装であれば、死神も黒以外の色を着ることを許される。だがそうなったとたん、生きている人間との距離が猛烈に近くなってしまって、本来死ぬべき人を冥界に連れていくことを拒む死神が出て来る、とか」 「そうそう。死神ファッション以外の服装であれば、生者の世界に紛れ込める。死神の特殊スキルを活かして人間界でやり直そうとする死神が出て来る、とか」 「死神の特殊スキルってなんでしたっけ」 「壁抜け、魂抜き、トゲ抜きです」 「最後のだけ意味がわかんないんですけど……。まあいいや。そうなってくるとですよ。オフィスカジュアル失敗ってことになりますよね」 「まあ、そうなりますかねえ」 「この漫画、ラストまで僕、読んでないんですけど」 「あんた、読まずにゲスト呼び込んでるんかい!」 「口が悪くなってきましたね(笑) 距離が近くなってきたかな? オフィスカジュアルによって。まあ……死神さんのそれはオフィスカジュアルにしてはちょーっと派手ですけど。袖口のフリル、邪魔じゃありません?」 「いいじゃないですか。なに着たって」 「そうですよね。なに着たっていいんです。でもねえ、こうやっていじられることもオフィスカジュアルだと出て来ちゃうわけで。結局のところこの漫画の言いたいことってそこだったって思うんですけど」 「そこ?」 「自由は素敵だ。謳歌したい人はすればいい。でも黒に守られている人だっている、そんな人たちにとってはオフィスカジュアルこそが牢獄だ、みたいな」 「まあ、そうですね。オフィスカジュアルを否定するものではありませんが、型にはまることで落ち着く人もいます。職務を全うできる人もいる。人それぞれですが、自由を取り入れたことによって型通りに生きようとしている人を蔑むようなことになってはいけないと思っていますよ」 「なるほど……。意外と深い内容で驚きました! この漫画最後まで読んでみます! 今日はありがとうございました!」 「(こいつ……いつか締める……)ありがとうございました……」
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