プロローグ

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プロローグ

 夕焼けにより赤く染まる草原。  弟たちの笑い声。 「ふはははは。この世界に血の雨を降らせてやるわ!」 「出たな、魔王め!勇者ルクが倒してやる!」  幼いふたりが棒切れで闘いごっこをする光景に、どこか懐かしさを感じる。  おかしいな。私、闘いなんて見たこともないのに。  この長閑な村に生まれ、16年間平和に暮らしてきた。  大人達は「最近魔王がに復活したらしい」と噂していたけど、遠い地の話の様で何のことだかわからない。  絵本ではそういった類のものは沢山出版されている。  だけど、戦うのは決まって勇敢な剣士、騎士、勇者。  私はただ、家を、村を守るだけだ。 「ぎゃー、やられたっ!」  ガクが両手を地面についてうなだれる。  その横をピョンピョンと小鹿のように跳ね回るルク。 「勇者ルクの勝利だ!」 「はいはい、勇者ルク、魔王ガク。夕ご飯の時間よ。家に入ってママの手伝いをしてきてちょうだい」  私は弟たちを促し、彼らが放っていった棒切れを集める。  ズシン、と重みのある棒切れを手にした途端、身体が自然に身構えた。  剣なんて触ったことすら無いはずなのに、衝動的に片手で横一文字に空を切った。  ―――何度でも蘇ってやるわ。  ―――次こそ、この世界を破滅に導いてやる。  地を這うような野太い声が頭に響く。  これは……遠い記憶?
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