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繰り返される闘い
揺れる大地、崩壊する山々。
荒れ狂う海、吹き荒れる風。
逃げ惑う人間、雄叫びを上げる魔物。
間もなくこの世界が崩壊しようとしている。
「魔王!世界の崩壊を止めるため、お前の命を頂戴する!」
勇ましい鎧に身を包んだ勇者が、我が屋敷の大広間の扉を勢いよく開け、叫ぶ。
「あぁ…また貴様か。貴様もしつこいな。何度生まれ変われば気が済むのだ」
大広間の中央で待機していた俺は、深いため息をつく。
「63年ぶりの宿敵に素っ気ない態度だな。そういうお前も何度復活し、何度世界を崩壊させようとすれば気が済むのだ」
勇者は大きな剣を振りかざし、構える。
「ほう、今度は剣士なのか。よかろう、この俺に簡単に勝てるとは思うなよ」
俺も手下から剣を受け取り、構える。
激しい攻防。鳴り響く金属音。
長い決闘の末、とうとう勇者は俺の喉元に剣先を突き付けた。
「チェックメイトだ」
そう微笑む勇者の息は上がり、頬を赤く染めるその姿はどんな貢物の姫君より美しく、艶っぽい。
30歳前後…といったところか。
ドレスで着飾るよりも鎧の方が似合っているんじゃないか、と言ってやりたい。
この女勇者は、俺が何度生まれ変わっても俺の前に立ちふさがる。
そして毎日のように押しかけてくるどの勇者よりも強い。
後にも先にも俺を倒すことが出来るのはこの女だけだ。
0勝31敗。
あぁ、今回で32敗目になるな。
俺はニヤリと笑った。
女勇者はその笑みに一瞬たじろいだが「覚悟!」と叫び、俺の首を刎ねた。
―――世界は一瞬にして静寂に包まれた。
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