繰り返される闘い

1/2
前へ
/10ページ
次へ

繰り返される闘い

 揺れる大地、崩壊する山々。  荒れ狂う海、吹き荒れる風。  逃げ惑う人間、雄叫びを上げる魔物。  間もなくこの世界が崩壊しようとしている。 「魔王!世界の崩壊を止めるため、お前の命を頂戴する!」  勇ましい鎧に身を包んだ勇者が、我が屋敷の大広間の扉を勢いよく開け、叫ぶ。 「あぁ…また貴様か。貴様もしつこいな。何度生まれ変われば気が済むのだ」  大広間の中央で待機していた俺は、深いため息をつく。 「の宿敵に素っ気ない態度だな。そういうお前も何度復活し、何度世界を崩壊させようとすれば気が済むのだ」  勇者は大きな剣を振りかざし、構える。 「ほう、今度は剣士なのか。よかろう、この俺に簡単に勝てるとは思うなよ」  俺も手下から剣を受け取り、構える。  激しい攻防。鳴り響く金属音。  長い決闘の末、とうとう勇者は俺の喉元に剣先を突き付けた。 「チェックメイトだ」  そう微笑む勇者の息は上がり、頬を赤く染めるその姿はどんな貢物の姫君より美しく、艶っぽい。  前後…といったところか。  ドレスで着飾るよりも鎧の方が似合っているんじゃないか、と言ってやりたい。  このは、俺が何度生まれ変わっても俺の前に立ちふさがる。  そして毎日のように押しかけてくるどの勇者よりも強い。  後にも先にも俺を倒すことが出来るのはこの女だけだ。  0勝31敗。  あぁ、今回で32敗目になるな。  俺はニヤリと笑った。  女勇者はその笑みに一瞬たじろいだが「覚悟!」と叫び、俺の首を刎ねた。  ―――世界は一瞬にして静寂に包まれた。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

37人が本棚に入れています
本棚に追加