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この女勇者との付き合いは、俺がこの世に魔王として生まれた頃……千年以上前からだ。
俺は何故か、決まって辺境の地の落ちぶれかけた貴族の子として誕生する。
産まれた瞬間から尋常ではない瘴気を放出し、屋敷中の人間を魔物に変え、手下にする。
手下になった魔物達は世界中へ散らばり、瘴気をばら撒き更に仲間を増やす。
ばら撒かれた瘴気は未知の病原菌となり、感染症を引き起こし、それを流行させる。
そして植物も枯らし農作物を不作にし、人間どもの生活を苦しめる。
また瘴気が蓄積されると、世界を崩壊に導くことになる。
大地に溜まれば地震を引き起こし、上空に溜まれば豪雨や日照り、竜巻などの悪天候が続く。
山に溜まれば噴火など、俺の意思とは異なる所で影響が出る。
魔物は魔導士や勇者によって倒される。
病気は医師や治癒魔法によって克服できる。
大地や空気の瘴気も、聖人による浄化魔法で消し去ることが出来る。
しかし、俺が放出する瘴気は年を重ねる毎に増えていくため、数十年もすれば世界崩壊へと繋がっていく。
それらを一斉に止めることが出来のはただ1つ、俺が死ぬことだ。
俺が死ねば世界中の瘴気が浄化され、魔物も死に、世界崩壊も止められる。
その事に気がついた人間ども。
俺がこの世に誕生したことを察知すると国同士の些細な争いをやめ、打倒魔物に協力し合う。魔導士や勇者、剣士を育成し、魔力の高い聖人聖女を探し回る。
そして、はるばる辺境の地の我が屋敷へやって来る勇者は数知れず。
ただの人間では屋敷に近づく事すら出来ない濃度の瘴気と襲い掛かる魔物から身を守り、やっとの思いで俺の元に辿り着いても、俺の張り手ひとつで命が尽きる勇者たち。
しかし、何故かたった一人だけ……正しくはたった1つの魂を持つ者だけが俺をてこずらせ、倒すことが出来る。
それが、この女勇者だ。
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