最後の時

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 魔物達の歓声の中、俺は自分自身に消滅魔法をかけ続ける。  静まり返っていく大地、落ち着く山々。  穏やかになる海と風。  雄叫びを上げ、消える魔物。  世界中から順々に瘴気が消え、魔物が消滅し、人々に平穏が訪れていくのを感じていく。  なぁ、今どこにいる?  思えば貴様の名前すら聞いたことが無かったな。  名乗った事も無かったがな。  魔王と勇者。  ただそれだけの関係、それなのに命がけの関係。  もし俺が今、この世界の崩壊を止めることが出来たら、またこの世界に生まれ変わってきてくれないか。  そして俺は、例えまた魔王として生まれ変わったとしても、今度は瘴気の放出を制御する術を身につける努力をしよう。  世界を崩壊してしまわないように。  大切な物を傷つけないように。  それが実現できた時は、俺とまた出会ってくれ。  今度は勇者でも魔導士でもない、普通の女として。  ―――ゆっくり時間をかけ、世界に平和が訪れた。 (了)
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