蜘蛛の糸

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「蜘蛛を見て季節を感じるとは、いかにも柏木さんらしいですね。実を言うと、私は蜘蛛が大の苦手なんです。子供の頃、手のひらほどもある蜘蛛が蛙を餌食(えじき)にしているところを目撃して以来、大きな蜘蛛を見ただけで冷や汗が出てくる……」 「ああ、アシダカグモですね。人間にとって危険な相手ではないけれど、徘徊性(はいかいせい)の蜘蛛としては日本最大で、捕食シーンは大迫力だからなあ……。不幸な体験でしたね」 「柏木さんには、そうしたトラウマになるような体験がなかったんですね」 「ええ、蜘蛛には割と興味と好感を持っていました。第一の理由はやはりファーブル昆虫記で観察記録を呼んだことですが、それに続いて偶然読んだ本の影響も大きいんですよ」 「ほう、どんな本ですか?」
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