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「なるほど。柏木さんもおっしゃっていましたが、蜘蛛の糸の人工合成というのは、実に有望な技術なんですね」
「蜘蛛の糸は、鉄に匹敵する強度を持っている上に、極めて軽い。しかも、一般的な化学繊維とは違い、加工に有機溶剤を使わないし、微生物によって分解される生分解性も備えているから、環境への負荷も小さい。マイクロプラスチックのような問題は生じないんです」
「まさに夢の素材だ……。ところで、霧島さんは蜘蛛を飼っていらっしゃらないんですか?」と堂島は尋ねた。
「オフィスではジョロウグモとコガネグモを飼っていますが、ここでは飼っていません。妻が蜘蛛嫌いだったもので……。まあ、蜘蛛が平気な女性というのは、ごく稀な存在なのかもしれませんね」
「先日、その稀な女性に会いましたよ。銀製の蜘蛛のブローチをしていて、昆虫の生態にも詳しかった」と柏木が言った。
「是非会ってみたいですね」
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