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二人の研究者のやり取りはさらに一時間以上続き、堂島と柏木が霧島のもとを辞したのは、午後八時をまわってからだった。
「すみません、すっかり話し込んでしまって」
駅に向かって夜道を急ぎながら柏木が言った。
「いいんですよ。こちらがお願いしたんですから……。それで、霧島氏の印象はいかがでしたか?」
「非常に優秀な研究者ですね……。そして、今回の事件については、残念ながら彼が夫人を絞殺した犯人だと思います」と、柏木は沈んだ声で答えた。
「確かですか?」
「ええ、恐らく。遺体はそのまま保管されているんでしたね? これから言う物質が遺体に付着していないか、前園君に調べてもらってください。殺害のトリックはそれで解明できるはずです」
翌々日の午後十時に、柏木と堂島は堂島の運転する捜査車両で再び霧島の自宅を訪れた。帰宅の時刻は、事前に霧島の会社に電話を入れて確認済みだった。
リビングに通されるなり、堂島は逮捕状を霧島に示しながら言った。
「霧島豊さん、あなたを妻、霧島恵子さんを殺害した容疑で逮捕します」
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