蜘蛛の糸

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「中学二年の水泳大会の時、待ち時間が長くて退屈だったから、フェンスの上で網を張っていたジョロウグモを捕まえたんです。それで、ふと絹糸のようなものが採れないかと思いついて、尻のところの糸疣(いといぼ)から糸を引き出して、人差し指に巻きつけてみたんです。何十周も巻いてゆくと、黄色い指輪のようなものができました。金色がかって見える光沢があって、なかなか綺麗(きれい)でしたよ。ジョロウグモの糸が黄色いことに気づいたのは、その時が初めてでした。丁度その時出番がまわってきて、糸を巻きつけたままプールに入ったら、急に糸が縮んで、痛いくらいに指が絞めつけられたんです」 「ジョロウグモの糸は、収縮率がおよそ五〇パーセントですからね。面白い偶然だな。僕も小学生の頃、柏木さんと同じような悪戯をしたことがるんです。さすがに、水に濡らしはしませんでしたが。思えば、あれが蜘蛛の糸に関心を持つきっかけだったのかもしれません」  霧島は懐かしそうにそう答えると、少し間を置いてから話を続けた。
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