蜘蛛の糸

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 翌日の午後五時、柏木は池尻大橋駅の西口で堂島と落ち合い、霧島豊の自宅マンションに向かった。 「ちょっと寄り道して構いませんか?」  住宅街の入り口にあるコンビニエンスストアに目を留めた柏木が堂島に尋ねた。 「ええ、もちろんです」 「すぐ済みますから」  柏木が歩み寄ったのは、店の前に並んだ、五台のトイカプセルの販売機だった。 「こちらに来ることはめったにないので、何か珍しい種類のものがないかと……」  気になる商品を見つけたらしく、柏木は左端の販売機の前で足を止めた。 「何か良いものがありましたか?」 「ええ」  柏木が選んだのは十二種類のトカゲとヤモリのマグネットだった。 「トカゲですね」 「ええ、外国産の派手な種類ではなくて、日本の在来種に(しぼ)っているのもなかなかの見識だ」  そう答えながら、柏木は百円硬貨二枚を販売機に入れ、ハンドルを回した。 「お目当てのものが出ましたか?」  カプセルの中を覗き込んでいる柏木に、堂島が声をかけた。 「ええ、尾が青い。ニホントカゲの幼体(ようたい)です。今日はついているな」
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