黒く、塗りつぶせ。

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 しばらくして目覚めた時には、庭先を眩しい朝日が照らしていた。よく覚えていないが、そういえば絵を描き終わった時には、辺りはすっかり暗くなっていた気がする。一日中絵を描いた後に、一晩中眠りこけてたってことかな……。  私は「う~~ん」と伸びをしながら、もう一度絵の完成度を確かめようと、キャンバスの前に座ろうとして。そこで「あること」に気付いた。 「え……ええええ?!!」  寝入る前に描いた絵は、確かに「妻がいた頃」の光景を、見事に再現出来ていると言えるだろう。が、しかし。それと同じ光景が……キャンバスの中ではなく、庭の中にあった。つまり、妻が小まめに草や花の手入れをしていた頃と全く同じように、キャンバスの向こうの庭には、各種の花が咲き誇っていたのだ。  これはいったい、どういうことだ? 眠りにつくまでは……いや、夢中でキャンバスに向かっていたので、確かとは言えないかもだが。あの庭には、花ひとつ咲いていなかった。どころか、庭に生えている草木の全てが、枯れてしまっていたはずだ……!  そこで私は、もうひとつの「事実」に気付いた。そうだ、庭に咲いている花の色も、その配置も。私が描き終えたこの絵にそっくりだ。というか、私が描いた絵、そのままの光景が。そっくりそのまま、庭の中で「再現」されている……?!  私は恐怖にも似た感情を抱きながら、恐る恐る庭先に近付いた。キャンバスに描かれた絵のように、庭先の光景も「2次元」なんじゃないか。一歩足を踏み入れると、それは立てかけた板に書いた絵のようになってるんじゃないか……そんなことを思いながら。  だが、予想に反してというか、当り前にというか。庭先に降りてみると、再現された花たちは、見事な「立体感」を持ってそこに存在していた。  
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