第一話 コンビニ・昼

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第一話 コンビニ・昼

二十四時間働けます! んなわけねえよな。でも世間には二十四時間開いてる店があった方が便利なんですよねー。 はい、コンビニへいらっしゃ~い。 そのコンビニは山が近くてさ、夜中の客が多いらしいんだ。トラックとかの兄ちゃんだな。で、更に工場もあったんだ。つまり夜中に交代する人たち。オープン当初からそれは変わんなくて、当然オーナーは夜間勤務の体制に力を入れる。 頑張りましょう、頑張りましょう。夜のお時間頑張りましょう。オーナーも店長も社員もバイトも、夜間だけは絶対空きを作らなかった。夜に来る客のためだ。 いやいや、ブラックだったって話じゃないって。 昼はいいんだよ、ほんとに。ほとんど来る客なんていないんだからさ。普通のコンビニと逆かもな。昼間こそ店員が一名体制でも問題なしで営業できてたんだ。あー、あー、違うか。さすがに一名じゃない。 でも夜間三名とか四名に対して明らかに手抜きではあったぜ。まあ、普通はやっていけねえよな。 なーのーで。俺はいつも昼間を狙ってそのコンビニには行った。 面白いもんと会えるからだ。 はい、そこー。これは普通のコンビニには適応されないのであしからず! まず、攻める時間は日が高く昇ってから。特に客が来ないような時間を狙います。 あと、納品トラックが来る時間も把握しとくといいかもな。そこを避けて暇になる時間に来店するんだ。 入店して最初にすることはレジに立ってる店員に挨拶する。ちわー、でも、ちゅーすでもいいんだぜ。とにかく「俺、来ましたぜ!」アピールをすること。 暇な時間は必ず誰かがレジに立ってる。んで、俺が最初にすることはお手洗い。トイレに直行だ。 いやいや、これがおもしれえの。 普通に入って、用を足す足さない関係なしだぜ? そこそこ大きな声で言うんだよ。 「あっれー? 紙がないなー」 わざとらしくてもいい。レジにいる店員に聞こえる声で言う。だから誰も客がいない時間を狙うんだ。 そうするとな、コココンって細かいノックした後で扉と床の隙間からトイレットペーパーが捩じ込まれてくるんだ。 「こちらをお使いください」 って一言添えてな。 そんだけ隙間が広いっていうのは気にするなよ? 律儀にペーパーが捩じ込まれることが面白いんだからさ。それをした後はしっかり手を洗って、いなり寿司を購入する。会計終わった後に「お一つどうぞ」ってレジ店員にくれてやるんだ。そんでクールに店を去る。 店を出て少ししたらもういいぜ? 振り向いて店内のレジを見るとこれが笑える。 キツネたちがレジの机の上に乗ってわっしょいわっしょい喜んでんの。 このコンビニな。昼間は近くの獣たちを雇ってたんだ。あり得ねえだろ? でも俺が確認した中ではキツネとタヌキはいた。多分他にもいただろうな。 普通、人はトイレットペーパー捩じ込んでこねえって。だってレジにいたはずの店員にどんだけ大声出せば聞こえると思うよ。獣が聞き耳を立ててて、言葉を理解した上でサービスしてくれてんだって。 町にある森も山もさ、もうボロボロで獣が棲める場所なんてないんじゃないかって思うんだ。もし、人に化けれる獣がいたなら雇って生活させてやるのも、あれだよ。家を壊した人間の責任と義務なんだ。
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