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2.
「あ〜。壊れちゃったよ」
建は真っ黒になってしまった画面を見て呟いた。
おかしいとは思っていたのだ。
ゲームを始めたときからアイテムや背景の一部が黒くなっていたのだが、それがどんどん広がっていって、あっという間に画面が黒くなってしまったのだ。
「建、帰るわよ」
母親の呼ぶ声に建は椅子から立ち上がった。
しょうがない。
なにせこのショッピングセンターのゲームセンターは、古いゲーム機しか置いていない。
母親と連れ添って買い物に来た時の暇つぶしでもなければ、わざわざやることのないような古いゲームばかりである。
もっとも建ももう小学6年生。
また母親とここに来ることがあるかは微妙だった。
「ほら、急いで」
両手に荷物を持った母親が急かすように言った。
建は母親の機嫌を損ねないよう、慌てて駆け寄ると、片方の荷物に手を伸ばした。
「お母さん。片方、僕が持つよ」
「あ〜。助かるわ」
母親は建に片方の荷物を渡すと、駐車場へ向けてさっさと歩きだした。
建は荷物を持つと、それに続いて歩きだして、そして足を止めた。
「あれ?」
足を止めた建に、すぐに母親が振り返った。
「ほら、行くわよ」
「う、うん」
建は再び歩き出した。
今、視界の端で、ゲーム機の角が不自然に黒くなっていたような気がしたのだが、きっと気のせいだろう。
建はすぐにそのことを忘れていった。
ゲームセンターにはもう誰もいなかった。
FIN
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